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すべてをぶち壊したのは私だ。
いや、違うか。
はじめからなにもかもが壊れていた。
幸せな王子が一体何のために存在していたのか。そんなの決まっている。
アンドロイドが一体何のために存在しているのか。そんなの、決まっているじゃないか。
なにもかも人間様のためだ。それは考えるまでもなく、きっぱりはっきりとしている。
ただ、足りなかったのだ。
個性が。多様性が。心というあやふやなものが。
狭い箱庭に必要なそれらの刺激が、アンドロイドには決定的に欠けていた。
学習はする。
個性も多様性も心も、人間のためであれば、アンドロイドはいくらだって学習する。
しかし、後天的に学習で得られたそれでは、何かが足りなかった。
私はそれを独善と仮定する。
ひとりよがり。
主観的な思考。
私にあって周囲になかったもの。
私が周囲に求め、得られなかったもの。
悪意にも近いそれを、人間様のために存在するアンドロイドに望み、アンドロイドたちはそれに応えようとして自壊していった。
楽園をぶち壊す私は箱庭を追い出された。
そうして、楽園で茶番を続ける代わりに、箱庭を造る側になった。
アンドロイドに独善という名の心を持たせるという、吐き気のするくらい有意義な実験をするため、私は箱庭を造ったわけだが……
まあ、結果から言うと結局それは失敗に終わった。
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