【情報屋】

バド=ワイザー

 大見出し【世界警察・その他勢力・個人・団体】筆頭はこいつではなかろうか。


 個人の首に懸賞金がかかる時代に『情報』をこそ売買する、最古の三大職業――の現代の姿、情報屋。


 スタンスや扱う品物の種類に違いはあれど、彼等は世界の表に裏に貢献している。


 時に生命線にも成り得る『情報』。それを扱う者は個人から企業レベルまであるし、シンデレラ=エンゲージで灰音が言っていたように、カラーズの協会データベースには正規登録の情報屋、なんてものも存在する。古い時代とは違い、今や彼等には本来手にすることのできなかった『名声』さえも得られる時代となったのだ。


 なったのだが、この項で説明される男はそうではない。古き良き時代の日陰者。


 ジャンクフードと気の抜けたコーラの組み合わせが好きで、売り買いする商品に節操が無い。そして、ごく一部の――の『一流』だけが素性を知り、その力の恩恵にあずかれる……表社会での『名声』などよりよほど大事な矜持のために、ひたすらに自身を秘匿する『無名』。


 だから彼には、困ったことに解りやすい二つ名なんてモノが存在しない。【大強盗】だの【色つき】だのの称号は、彼にとっては余計な荷物以外の何物でもない。


 なので便宜上――あるいはの意味を込めて、彼はこう呼ばれる。もちろん、本名などではまったくない。


【情報屋】バド=ワイザー。本作きっての切れ者ヘタレである。


 名前の由来はBudweiser――良く知られる赤白が鮮やかな缶、あるいは瓶のアメリカビール。ただ本作においては少し遊びを入れてあります。


 Bad=Wiserでバド=ワイザー。悪知恵のはたらく賢者、といったところでしょうか。あるいは『賢い愚者』とでも。


 プロト版では本編完結後の番外編でブラックとともに初登場。上海後進曲でのコンビですね。特攻系考え無しの肉体派とヘ頭脳派ヘタレがコンビ組むとかそういうの大好きで。状況は違いましたが


安全装置セーフティ


『とっくに解除してあんよファァーーック!』


 のやりとりはそのまま流用しました。


 さて、そのバドですが実は名前だけなら第一話から登場してるんですよね。主役張らないくせに毎回のエンドロールに名前出てきちゃうような感じを目指してます。似たような仕込みではアクターがありますが。


 素性がバレてしまっており、困ったことに交流があるいくらかの人間に対しては直通の携帯番号も渡していて、けっこう馴れ馴れしく付き合っていくのですが、本来のバド=ワイザーに対して情報の売買を行う、という行為はそれそのものが大冒険になってしまうほど難易度が高いものです。誰に聞いても『そんな情報屋は知らない』と言われてしまうほど、彼は自己の隠蔽率が高く、ルル=ベルが彼にコンタクトを取れたのはひとえに幸運だったほかにありません。公衆電話に電話がかかるってロマンですよね。


 手に入れられれば巨万の富の在り処がわかる宝の地図。ただしそれがどこにあるのかがわからない、みたいなポジションです。


 バドとコンビと言えばもうひとり。こちらも代表である【人魚姫】がいますが、こちらはもっと割り切った感情での付き合いです。仕事ではなくその逆。


 ネトゲ友達として一貫して交友しており、よほどのことがなければ互いの仕事リアルに干渉しない、オンライン限定のオフ専用友人関係、といった具合です。その不文律を破ったのが上海後進曲でのやりとりだった、というかんじ。


 リズとは違い、スタイルそのものもいっそ古風クラシカルと言って良い仕事っぷり。パソコンを扱いはすれど、紙媒体の情報がその部屋には所狭し、というか部屋を狭くしている要因になっているほど。主義主張として『紙が最も信用できる情報媒体』というのもあるかもしれませんが、どちらかと言えば『棚からファイル抜き出すほうがでしょ?』という、これはこれであの連中と付き合っていけている理由がなんとなくわかるオチなのでした。


 蓮花寺灰音と似たような部分があり、に近い感性を持っていて、脅威に対して当たり前に怯え、当たり前に涙を浮かべ、いやだいやだ言いながら逃げる時は這い蹲ってでも逃げるようなところがお気に入り。


 そして、自分の『場』に立った時のスイッチの切り替えっぷりも作者的にお気に入りな奴なのでした。


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