世界警察・その他勢力・個人・団体

<最愛>【シンデレラ】

蓮花寺灰音

 

 強盗童話番外編【首輪物語】シリーズ主人公兼ヒロインにして本作最大のダークホースにして某SNSお遊び企画にて人気投票第一位にして賞金首に聞く『捕まえられたいカラーズNO.1』の女子高生賞金稼ぎ、蓮花寺れんげじ灰音ハイネについての項目です。なにこれ。


 初出は【首輪物語】の初期エピソード、『硝子の靴を履けるまで』――ではなく、第二話『ヘヴィロック・ミリオンダラーズ』の最後ですね。隠すまでもないですがー。


 この蓮花寺灰音の製作としては、一通り書いた後にふと。そうですね、プロト版の終了後、ブラックたちの番外を書いてそれより更に後、強盗童話に書き直した一話の少し後、なのでプロト版から何年か経った後に唐突に『一般人書いたらどうなんのかなー』っていう感じでできました。


 世界を賑わす賞金首やそれを狩り求める賞金稼ぎでもなく、その騒動に巻き込まれる一般人にスポットを当てたらどうなるか、っていう試みでしたね。


 そんなわけで灰音の初期コンセプトは『特別なものを持たない』でした。


 フタを開けたら一般人どころか着実に逸般人の素養を埋め込まれてましたけどねーはははー!


 ともあれ灰音へのコンセプト、というか狙いはわりかし上手にいったのかしら、とも思っています。


 他の主役たち……たとえばOZの連中なんかに対しては『観劇』として視点がいくように、その現実味のなさを楽しむものとして書いていますが、灰音に関しては視点を読者さんと同じに共有できる子、みたいな。彼女の人気が高いところはそこなのかなー、とも思っています。


 で、事情があって女子高生しながらカラーズをやってる女の子、という感じで書いた『硝子の靴~』でしたが、作者は作者で「え、でもどうして賞金稼ぎなんてやってんだこいつ」と頭を捻ってしまったわけで。


 その結果生まれたのが、旧【緑】の座にあったカラーズ、チェスとミリオンダラーの五番【パレード】ルナ。いま思えば本当に【シンデレラ】のように豪華なモノを用意したものですね。五色とミリオンダラーを、その舞台のエッセンスにするだなんて!



 蓮花寺灰音は、カカシとあわせて、たったふたりの『主人公』でもあります。他の連中はキャラが濃く、担当するエピソードの中でにはなったりもしますが、『この人物の物語』で書くのはこのふたりだけ。そして、在り方もカカシと灰音では逆のアプローチで作っています。


 カカシは『自らを中心に世界を回す』タイプ。どれだけカカシが中心にいるのを嫌がってもです。


 灰音は『彼女を中心に世界が回る』です。舞台に立つ、と舞台が立つ、の違いでしょうか。最終話では――うん。それを最大級の『脇役』として立ったからああなった、でしょうか。


 そんな彼女の……言ってしまえば、一個だけ設けた異能。第二項でスズの上位互換というのは灰音のことです。


 灰被りシンダー。目立たない、という特性。それを看破するには一級品の『目』が必要とされます。全体を通して、彼女が大成するまでは蓮花寺灰音の『良さ』に気付いた人間というのはみんな、彼女が(本能的に)恐れているです。


 誰にも声をかけられずにロンドンで行き倒れ寸前だった灰音を見つけたレオ。


 人体のパイオニア、ルナのグノーツ=フェブラリィや夕陽丘億人の第一印象。


 初見で自分のところに引き入れようとしたマリアージュ=ディルマなど。


 言ってしまえば、本来きちんと見ることができれば蓮花寺灰音はとても愛らしく美しい少女、ということになります。


 余人にはどうしても意識的にフォーカスを合わせられない、という妙な特性とでもしておきましょう。


 童話のシンデレラにおいて、どうして魔法使いはあの少女を救ったのか、ということに対しての少々歪んだ見解から、それはきています。


 優しい娘はたくさんいたことでしょう。環境に恵まれない娘もたくさんいたことでしょう。


 ではどうして魔法使いは、そんなたくさんの中からシンデレラ――エラだけを?


 ……単純に、とてもうつくしいものを持っていたからこそ、という考え。化粧やドレスで着飾った女性などは見飽きているであろう城の王子が、瞬間的に見初みそめるほどの。


 それだけのモノを持っていながら灰音は目立たず、解る人間からすれば奇跡なほどの回避で、あの瞬間まで誰のものにもならないのでした、みたいな。





 雑踏が行き交う東京の街で、たったひとりを見つけた国府宮弓。



 チェスの<ナイト>はアイスを買ってご機嫌なところ、その風景にド肝を抜かれたのでした。次の瞬間には衝撃と同じ大きさの危機感を持って、迷いなく少女の傍まで足を進める。


 


 とまあ、弓くんサイドの邂逅の先出しをしつつ。



 最終話の後。彼女――シンデレラに贈られた称号は<最愛>。


【白】のカラーズの弟子であり、約束エンゲージを果たした【緑】の姫君。


 エピローグの後の世界では、世の中の男性賞金首や賞金稼ぎからヘイトを一身に集めつつのらりくらりとかわしては笑うナイトの姿もその隣にはあるのでしょう。


 シンデレラ=エンゲージのひとつめのエピローグで終わらせるつもりだった作者の私に、問答無用のハッピーエンドを書かせやがった愛しい苦労人。


「……こんなクソな彼氏のことなんざ忘れて、ミーハーな蓮花寺らしく、イケメンに惚れまくって恋に落ちろ。失恋沢山して良いから、その分ちゃんとした幸せ、掴めよ」


 前半の設定忘れてを拒んだからこそ、最後の願いちゃんとした幸せを得たのでした。



 言うまでも無いですがシンデレラ=エンゲージの『エンゲージ』は『蓮花寺』とかけてあります。苗字の由来の蓮花寺池公園を、地元の人間は略して『れんげーじ』と言ったりするので。


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