八番【怪盗】

不思議の国

 

 初出はプロト版の3話。強盗童話では2話になっているエピソード『ヘヴィロック・ミリオンダラーズ』から。


 この時は、なんだろう。たしか「なんかライバルキャラを……」とか考えてよく考えずに『ミリオンダラー』という呼称にした気がします。


 OZと同じように世界を賑わせる犯罪者たち。八組にした理由は今では思い出せません。


 とにかく、この不思議の国ワンダーランドを考えたときに、現在の強盗童話の重要な枠組みの、八組の大犯罪者=劇場型賞金首、という構図が出来上がりました。


 当て馬とか噛ませ犬とかプロト版では散々な感じだったので、強盗童話ではそれなりに色々と修正を加えたり加えなかったり。



 <不思議の国の>アリス


 リーダー。ドロシーと同い年で、家はアルフォートファミリーとも交友がある模様。

 ドロシーが先にイメージカラーが赤だと決まっていたので安直に青を設定したものの、その後になって『カラーズ』とか出しちゃってちょっと冬春的にバツが悪い。


 テンプレ系お嬢様。実は台詞の数々がとてもお気に入りで、劇場型犯罪者っぽい芝居がかった台詞が多い。そして初期にドロシーに設定したはずのツンデレっぽさをこっちが実装しているという罠。


『竜巻は呼んであげてもよくってよ。だけど――お家には帰さないわ!』とか

『わたくしを傷つけた罪は、白い薔薇を赤く染めたって許されたりはしないんだから!』とか個人的に大好き。


 偽名はセイラ=キャロル。ceilaはaliceのアナグラムで、キャロルは『不思議の国のアリス』の作者、ルイス=キャロルから。この名前が本編で使われるのはマリーさん家に逃げ込んだことから始まるお話、『幻盗記』ですね。


 セイラ、と呼ぶのは現状マリーさんだけなので何かこう、彼女的に特別なのだろう。この世で最も美しい薔薇を巡ったお話なのに何故か百合い。


 ――そして、栄えある最高のFPライダー。シャンゼリゼ通りから凱旋門までの超ロングランと、最終話のスネイクス・リトルクラウンでのドロシー完封。


 ランスロットに憬れ、ドロシーを憎み、同じくらいでありたかった少女。


 動機は毎回大人げないように見えて、実は他よりもちょっとだけ大人びている。びている、というのはやっぱり子どもだから。大人の「実感」ではなく『いずれ、朽ちる予感がする』という、漠然とした不安から……きっと、物語の誰よりも『夢』を大切にしていた子。


 アリスの癖である、胸に両手を当てるポーズは、そうした不安と、まだ残っていることへの安堵からくるものでもあります。


 あと「よくってよ」は外せなくってよ。



 <イカレ帽子屋>マッドハッター


 不思議の国ワンダーランド作成時、アリスの次にスポンと生まれた苦労のないキャラ。怪盗紳士枠。シルクハットに片眼鏡モノクル、仕込みステッキ、赤毛の三つ編みとそれまで無かった趣味要素をふんだんに取り入れた被害者。ベディあたりと相性良すぎて殺し合いそう。例に漏れずレオと仲がくっそ悪い。


 ステータスにテコ入れが入ったひとの一番目。居合いからの銃弾切断ってなんですか。お陰でレオに銃を四挺持たせる羽目になった。つよい。


 偽名オリヴィエ。もうこの時点ではなんも考えずにつけた名前。由来はしらない。


 元々プロト版では暗殺集団だった頃のルナの十一月だった。暗殺集団という設定ごとふっとばしたので今では安心です。依頼を受けてアーサー暗殺に乗り出して失敗したエピソードは一生公開されることがないでしょう。


 最終話の世界警察戦での羽目の外しっぷりは個人的に満点。よくやったぜ。これからも苦労してください。



 <白兎>ホワイトラビット


 爆弾魔。プロト版ではスズと昔なにやら因縁があったようだがわからないままそのまま本編でもわからない。不思議の国のアリスでの白兎はもう時計見て「時間がー!」という印象しかなかったので武装は懐中時計型爆弾にしたんですがなんぞこれ。


 しかもたくさん持ってるのですごいチクタクしてそう。


 本名・年齢不明のロシア人、という設定です。アルビノなので白髪と赤目。だが兎というにはムッキムキで可愛らしさゼロなのである。


 破壊工作にも秀でており、あと頭も回るので脳筋ではない。二話でスズに言われた「粋」という概念がどういうモノかを理解しようとしているのが最近のホワイトラビットさん。プロト版ルル=ベル編で逃避行をしていたスズとルル=ベルのお部屋をノックすることもあったけどこれも昔の話。こいつを掘り下げる日は来るのだろうか。



 <双子ジェミニ>ハンプ=ティーとダンプ=ティー


 不思議の国のアリスで双子と言えばトゥイードルですが。


 これはプロト版のヘヴィロック・ミリオンダラーズを書いてた瞬間に原因があります。

 この時、冬春の家に親友が泊まりに来ていて、こともあろうに執筆もしていたのです。


 冬春「双子……双子! なんか、不思議の国のアリスで双子ない!?」


 この時、トゥイードルは完全に冬春の頭から消え失せていた。


 親友「すまん。双子と聞いてなぜかハンプティーダンプティーが出てきた」


 そして即決採用である。


 17歳。カカシと同い年。双子ならではの錯綜や、お互いを入れ替える遊びなどさまざま。本来強盗童話で『双子』はこっちのティーを差す。


 煽り枠。たぶん一番読者さんに嫌われてるんじゃないだろうか。たぶん。


 二人で一つのFPライダー、ティー兄弟。だが二人合わさった時の連携プレーは単純な足し算ではない。個人技能よりも、合体技のトリックを多く習得している。


 特にエルグランドホイールとかはきっと、本編で出てくるFPライダーだとティー兄弟以上の精度では使えないのではないだろうか。


 余談ですが『幻盗記』で「電源復旧しました!」はダンプの台詞。





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