四番【人魚姫】

DIVER=DIVA



 ハッカーの最高位【魔術師ウィザード級】を凌ぐ、世界に五人の【妖精フェアリー級】ダイバー。


 主要国の機密サーバーに、まったくの同時刻にハッキングを仕掛け、その最後のドアも易々と開け、きちんと鍵を閉めなおして姿を消した彼らはそう呼ばれているが、これは世間的なである。まったく信じがたいことであるが、この正体不明の天才たちの最大数を計れない以上、せめて最小の単位を定義した結果である。


 それぞれが妖精のアバターを用いていたことから、構成メンバーの五人はそれぞれ


 <オベロン>


 <シルフ>


 <ウンディーネ>


 <サラマンダー>


 <ノーム>


 と呼称がつけられたがそれは妖精王オベロン以外ではないのか、というあれこれはさておき。


 物語の時系列ではかの【大強盗】や【怪盗】に先んじて、空席の【四番】を埋めた、電子の海を誰よりも速く泳ぐ【人魚姫】。それはネット環境が現代よりも進歩している強盗童話の舞台で間違いなくの称号でもある。


 ――と。ここまでが世間的な彼らの情報。『上海後進曲』で明かされたように、実際はもう少しひどい。


 五つのアバターを用いて世界的なハッキングをしたのは個人。


 本名をファリシア=エリューゼロッテ=ランバート。主な時間軸ではドロシー、アリスらと同じ16歳の少女である。



 実は、このキャラクターはプロト版強盗童話を書きあげた後、当時から拙作を愉しんでくれていた方へのリスペクト、という結果で生まれた背景がある。生まれて初めてでしたよ。スピンオフなんて書いてもらったの。


 さて。このシルフ――愛称リズは冬春的にけっこう重要な役回りを担ってもらっている子でもあります。


 舞台のメインは言わずもがな『空』ですが、同時にほんの少しの未来を舞台に設定してある強盗童話では、現代科学の延長のわかりやすいパーツとして『ネット環境』という要素も必要でして。


 多くの少年少女たちが、空の高みを目指した飛行症候群ピーターパンシンドロームである傍ら、この少女には電子の海の深みを目指すダイバーでいてもらいました。


 そして、アリスの友人。ということはその憧れもよく知っていて。


 ではどうして同じように空を目指さなかったのか。あるいはそれを止めてしまったのか――は、また次の機会に。



 もうひとつの重要要素。最終話で走らされる羽目になった生身のリズ。行き先は舞台をハケた彼の居場所。リズの好物は『甘いもの』なのです。


 それは、脳を動かす糖分であったり。


 結末が『泡になって消える』ような悲劇ではない、問答無用のハッピーエンドであったり。





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