二番【大強盗】

OZ

 

 みなさまご存知大強盗。狙った獲物は逃がさない。徹頭徹尾に竜頭蛇尾。


 これは、最後の最後まで彼らが何かを奪う童話。


 というわけで二番手は主役のOZの四人。余談ですがミリオンダラーの八組と同じように『二枚目(イケメン)』の元ネタの『看板役者』というものも八枚で構成されているのだとか。知りませんでした。そこに当てはめると席次がごちゃごちゃとするので順番を変えたりしませんが。




 <日曜の魔女サンデイ・ウィッチ>ドロシー


 本名ドロシー=アルフォート。16歳。イギリス人。飴色の長い髪に青い瞳。赤いワンピースと首に巻いた赤いリボン。文字通りOZの紅一点。


 何を隠そう『強盗童話/0』のエピソードでセシリアさんのアジトに「家を落とそう」と計画したのがこの少女。ブッ飛んでいる。


 どんな子かはさんざん本編で語った通り。最初期、書き始める前のざっくりとした記号付けは「ツンデレ」くらいの雑さで、いざ動かしてみたらツンデレではなくアッパー系ヤンデレヒロインとかいうすさまじく濃いモノに仕上がってしまっていた。


 血筋でいうなら間違いなく作中屈指のお姫様。ただし生きる世界はカタギではない。


 FPライダーとしての位置付けは最終話で白黒ハッキリ付いてしまうまではトップ。そこには実力以外の部分もいろいろと加味されたりしての評価だが、本人は気にしていない――というよりも、といった風情。


 使用ボードはスカイフィッシュシリーズの<サンデイウィッチ>。これがそのままドロシーの二つ名にもなっているが、他にも色々とあだ名はあったりする。

 <カカシの恋人>とか<竜巻乗りトルネイダー>とか。


 ……『自分は多くのFPライダーに恨まれている』と認識している。それは半分本当で、半分はその他のFPライダー……ドロシーと同じくらいの“こども”が、だからこそ言えなかった、ランスロットよりも好ましい、人間らしい意味での『憧れ』を寄せられていたことを、最後の最後まで知ることはなかった。それまで知らなくて良かったのではなかろうか。


 喜怒哀楽表現の大きい少女。本当は悲観的だが、カカシが(自責に対する言い訳のように)「笑っていろ」と言った日から笑顔を装填するようになった健気なヒロイン。いいぞドロシーもっと泣け。


 プロト版との大きな変更点は髪の長さでしょうか。元々が短くて、最終話までに伸ばしていた、というのを逆にしました。


 ちなみに、ワンピースの下はスパッツなのでFPで空を飛んでもごあんしんです。




 <四ツ牙>レオ


 本名レオニード=ヴァレンティーノ。24歳左利き。イタリア人。金髪金眼、薔薇柄のシャツにヘビ柄のパンツと隙がなく危ういOZのアタッカー。


 薔薇シャツの色男ロメオだが、こだわりはシャツではなく薔薇の方。服装のどこか一部に薔薇を必ず一点は着ける、という拘りがあり、結局本編では着替えなかったけれど、真っ当なスーツだった場合などでも、たとえばネクタイピンなんかが薔薇モチーフになったりするはず。理由はそのうちまた。


 派手好き酒好き女好き、といろいろ反感を貰いそうでもあるけど作者的に大好きな兄貴。メイン装備はトーラス・レイジングブル・オーバーカスタムを四挺。45口径カスール弾の威力、サイズはヤバいので通常6のシリンダーの装填数は5つとなっている。


 プロト版では二挺拳銃使いだったのだけれど、色々な仕様変更に伴ってまずテコ入れが後述のマッドハッターに入ったところ、二話の戦闘で『あれ……レオ勝てなくね?』となり結果として四挺に増やしてみたらなんとかなった。やったぜ。


 元々はアルフォートファミリーの若き幹部で『アーサーの左腕』と呼ばれる荒事担当の一人だったけれど、アーサーに頼まれたからではなく自分からカカシとドロシーに付いて行くことを決めた、という過去がある。理由は最終話のリカー戦で。


 基本的に元ネタからの設定を踏襲なんてしていない強盗童話の中で、オズの魔法使いのライオンは「勇気がない」だったかしら。そういう意味でレオは蛮勇のように見えて、それなりに臆病であったりもします。


 生まれは貧民街。父親はおらず、母親は娼婦で、そのままいけば当たり前のようなバッドエンドだったのだけれど、アーサーに拾われた過去から、彼は何よりも『家族』という括りのものを大事にしている。


 あからさまな強キャラとして登場しているように見えて、実はかなり戦績が奮っていないのでした。お気づきでしたでしょうか。


 マッドハッター戦は辛勝。


 エル戦は敗北。


 リカー戦は引き分け、止めが入らなかったらまず負け――と結構な感じになっていますが。


 レオは自分の出番、というのをOZの中で……あるいは登場人物の中で一番理解している男でもあります。カカシやドロシーが出くわしたらまずい敵の相手を先んじて演じる。一番の強敵、難敵に対しての嗅覚とでもいいましょうか。


 レオは、臆病なので。


 ライオンの群れのボスのたてがみが一番立派な理由は、群れにではなく外敵に対して「俺がボスだ」とアピールするためのものなのではなかろうか。


 なお料理が得意でほんとにモテる。





 <ブリキの兵隊>スズ


 OZの壊し屋。日本人男性。他すべて不明。


 ダークスーツの偉丈夫。コマンドーかな? というレベルで重火器の扱いに精通している謎の男。


 アルフォートファミリーにおいてもどのような位置づけだったのか語られておらず、更にはその人格の一端以外が謎のまま物語は終わってしまったわけで。


 ですが、最終話の書き上げ直前の頃にふと「ああ、こいつはそのままでいいかもしれない」と思ったのでした。


 童話において、彼はたしか、油の切れた状態でドロシーと出逢った……と思うんですが(まだ読んでいない)。


 彼は最初からブリキの木こり、として登場したのでしょう。合金の鋳造からパーツ合わせ、いかにして稼動をしたのかが語られておらず、完成からスタートしていた――


 スズもそれで良いのかなーって、自然にしっくり来たのでこいつはきっとこのまま。アフターストーリーは出てきても前日譚はないだろうこと請け合いであります。


 実際カタギじゃないし見た目カタギじゃないっぽいのに「風景にまぎれる」という特異な特技を持っている。そっと場面を彩るエキストラ化とでもいいましょうか。あとひとり、これの上位互換の異質な才能を持っている人物がいますがまたそれは別の話。


 そこに違和感を持ったのが、の挑戦の始まりなのではないのでしょうか。


 トトを一番甘やかしている。




 <足無しスケアクロウ>カカシ


 17歳。紅茶色の猫っ毛に紺色の瞳。押しも押されぬではなく押されて出てくる主人公。名前を言ってはいけないあのひと。


 ダウナー系主人公で影が薄い――と思っていたら要所々々で色々と目立っていたなあ、というのが書き終えての感想です。特技は戦闘、走空ではなく交渉。


 プロト版との一番の違いは、ドロシーに対する態度でしょうね。昔はひたすらドロシーに甘く、なんていうか見ていて空に砂糖をぶちまけるような空中バカップルでした。爆発しておけ。


 終始人生に苦しみがあった様子。聡く、幼さを否定したいがために背伸びを続けたあたり童話の案山子とはだいぶちがう。


 飛行症候群ピーターパンシンドロームの語源にさえなった少年だが、本来のピーターパンシンドローム――大人になりたくない願望、をまったく持たなかった。


 寧ろ逆で、事あるごとにレオやスズに煙草の味だのコーヒーの味だのを聞いていたりと可愛らしい。彼の中の大人の「記号」がそういう部分にあったのでしょう。


 大人たちは「大人のなり方」を教えてくれたりしませんでしたが。



 ――本名ランスロット=ジャックス=ハイドロビュート。セカンドネームは幼名で、祖父であるオズがジャックと呼ぶのはその辺。


 ハイドロビュートはイギリスの貴族の流れを持った家系で、家長のガラハッドは裏世界のアーサーと親友であり、共に子どもみたいな馬鹿げた夢を見ていた。


 それが飛び火し、アルフォート家を巡る抗争により焼失。以後、遺児の二人は同家に引き取られ――双子の妹(姉)のカレンとは祖父の家に奪われるように分かった、という過去があります。


 蓮花寺灰音の『復讐』に手を貸した理由は、偽物が本物に対してみた「憧れ」ではないのでしょうか。


 嗚呼。正しい復讐というモノの炎は、そんな色をしているのか、と。


 使用ボードはスカイフィッシュシリーズ<NASTY>。これはFPメーカーのスカイフィッシュがこの少年に惚れ込み、専属契約モデルとして作ったオリジナルモデル。


 NBAのプレイヤーモデルみたいな感じですね。ジョーダンシリーズみたいな。


 他にも初心者用ボード<ヒルズ>にも乗ってみたりしてました。実は一番たくさんのボードに足をかけているっていう。


 それから最後の二人乗りロングFPボード<クローバー・フォーリーブス>。






 ――さて。トランプの柄のお話になります。ピクチャーカードにはそれぞれモチーフとなった人物がいるのだそうで。


『クローバーのジャック』は、かの『ランスロット卿』がモデルなのですってよ?


 お気づきになりましたでしょうか。




 <HT2S>レイチェル


 カカシの赤い飛行艇『ハイアー・ザン・ザ・サン』に搭載されたオンボードAIシステム。機体製作者はオズ。AIシステム構築者がカレン。


 実はプロト版ではこの飛行艇にAIシステムなんて乗っかってなかったんですよね。後日談で出てきた時に搭載されました。


 カカシの翼。カカシの道具。カカシの理解者。自分が「そう」在ることに、一番の喜びを持っていた仮想人格。


 機械音声然とした抑揚まったくなしのナビさんでありながら、カカシよりもよっぽどウィットに富んだ台詞を発信するあたり、この子も充分『劇場型』なのだろうなあ、と。冬春的にだいぶお気に入りの子であります。


 最終話、彼を送り出す際の台詞には副音声が入っておりまして。


 ≪当機は二人乗りでございますドロシー様とご一緒に。良い空を、マイスター≫


 ほんと、デキるナビである。


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