【第三十話】目覚め

はっ!


目を覚ますと最初に天井が目に入った。


え、どこここ。


まさか転生オチ?


いや真面目に考えろ。確か俺はポチを庇って・・・その後どうしたっけ?背中に激痛が走ったのを覚えてるから多分ワイルドボアに突進された。そうだ、それでその後煙玉を投げて・・・ダメだ、どうしても思い出せない。俺は何でここにいるんだ?

体動かそうとして、背中に痛みが走る。


「痛っ、この分じゃ起き上がれそうにないな。」


首を動かして辺りを見回す。


ベッドが並んでる・・・病院か何かだろうか?


ふと、腹の上に何か乗っているのを感じ、そちらを見る。


「あれ、ポチ?」


俺の上でポチが寝ていた。とりあえずはポチも無事で安心した。

おっと俺の声でポチが起きたようだ。


「ごしゅじん!おきたのか!?」


俺が起きて嬉しいのか尻尾をブンブン降っている。

おい、嬉しいからって顔を舐めるのをやめてくれ、やめt、やめろって!こっちは腕を動かすだけでも背中が痛いんだから!


満足いくまで俺の顔を舐めた後、ポチ「はっ!」と何かを思い出したように俺から降りて部屋の出口の方に走って行った。忙しいなあいつは、でもあっちに行ったってことは誰かあっちに居るのか?あ、戻ってきた。


ポチが部屋に戻ってきてポチの後ろから誰かが部屋に入ってきた。


「おお、起きたか!」


部屋に入って来たのは騎士団のルガードさんだった。

なんとか体を起き上げる。


「今部下がセオドア様を呼んでいる、しかし驚いたぞお前が子犬に引きずられて門までやってきたときは」


話を聞くと俺が気絶した後、ポチが森から俺を引きずって門までたどり着いたらしい。たまたま門に居たルガードさんが見つけて俺を騎士団の医務室まで連れて行ったらしい。

助けたと思った犬に逆に命を救われてるところが実に情けない。


「でも「セオドアを様呼んだ」ってどうして呼んだんです?」


「実は本部にセオドア様が来ていてな、一応うちの団長へ報告に行ったときに捕まってな。」


セオドア爺さんか・・最近連絡もなかったし放っておいていたけどそういえば俺の体を調べるとかそう言った話はうやむやになったのかな?


「お前が寝ている間になにやらお前にポーション飲ませたり魔法をかけたりしておられた。」


おいっ!人の体に何してくれてんだあの爺さん!?大丈夫だよな?怪しい薬とかやべぇ薬とかじゃないよな?

しばらく待っていると疑惑の人物セオドアその人が医務室に現れた


「おお、元気か?ユウシ君や」


この爺さん・・じゃあ俺がどうしてここに居ると思ってるんだよ。


「そう怖い目をするな、冗談じゃ冗談。」


「そ、それよりもまさか怪しい薬とか飲ましてませんよねぇっ?」


「なーに、大丈夫じゃよ。お主に飲ましたのはこれじゃ。」


セオドア爺さんが懐から取り出したのは液体が入った瓶。・・・でもその色が濃い緑だ。


「なんなんです、それ?」


「これは治療に効く、それも打ち身に効くポーションじゃ。」


えぇ・・なんていうか・・真緑なんですけど?


「それでどうじゃ、体の方は?」


「どうって・・普通に痛いですけど。」


さっきもやっとのことで起き上がった


「やはりか・・・いやユウシ君、とても大切なことなのじゃがな?」


セオドア爺さんは神妙な面持ちで話し始める。


「お主が魔法を使えないのは知っての通りじゃろ?魔法が使えないだけでなく、聖魔法--つまり療術じゃな、療術がお主自体に・・・・・使えないらしい。」


療術って・・確か回復魔法だったよな?回復魔法が俺に使えないってどうゆう事だ?


「俺『が』じゃなくてですか?」


「お主『に』じゃ。お主に療術が使えないということは、つまりお主を魔法で治療することができないんじゃ。」


うーん、ピンとこない・・・魔法で体を治すって言われても実際に目にしないとなぁ


「加えてさっきの様子じゃとポーションも効かないらしいのう」


結局回復はできない訳か。でも別に困らないしな、回復無くても。襲われないし。いやでもワイルドボアに殺されかけたのか・・・


「あまりピンと来てないようじゃな。これは大変なことなんじゃよ?」


そういわれてもなあ・・・


「俺の世界じゃ一瞬で傷が治るなんて無くて、怪我なんて自然治癒が基本でしたからね。病気だと飲み薬とか後は手術とか。」


「お主の世界じゃそうして怪我を治していたのか。」


「まあでも魔法の方が確実で早いですけどね」


セオドア爺さんは興味深そうに聞いて・・・あ、これ違うな、俺が魔法で治療できない理由を考えてて全然話を聞いてない。


「でも面白いのう、まさか治療できないとは」


セオドア爺さん呆気に取られてる俺をよそに楽しそうに笑ってる。


「それにしてもそのけがじゃ歩くのもつらいだろう。動けるようになるまでここにいるといい。」


ルガードさんが俺に提案してきた。


「そうじゃ、儂の方からお主のギルドの方には言っておこう。」


そういえばクラリーチェさんと知り合いらしいな。


「じゃあ儂はこれで」とセオドア爺さんが去っていく。やっぱりあの人は嵐のような人だよな。


「さて、じゃあ私も行こうかな。」


ルガードさんも帰るようだ。今回この人にはお世話になった。


「あの、ありがとうございました!」


「ああ、市民を守るのが騎士団の役目だ。」


カッコイイこと言って去っていくルガードさん。最後のはクサかったけど感謝しないとな。


病室は再び俺とポチだけになる。


「ポチ、助けてくれてありがとうな」


「でもごしゅじんまもれなかった・・・」


「そんなことないさ、ポチが助けてくれなきゃ俺は今頃死んでたよ」


いやマジでホント。


「ポチはつよくならなきゃいけないっておもった」


ポチが強くなってくれるのは嬉しいけど・・


「きのうたたかったあいつにぜったいかつ!」


一人で・・っていうか一匹で勝手に燃え始めた。確かにあの猪に勝てるくらい強くなってくれれば今後の農耕生活・・・じゃないや、冒険者生活には確実にプラスになる。でも子犬が強くなるっつっても限度があるよな?


「強くなるあてはあるのか?」


「それは・・・まだかんがえてなかった」


なんじゃそりゃ。まあいいや、ポチが強くなりたいって言うのならその意思を尊重するし、俺もできるだけ支えてやろう。そのためにも早く引退しないとな。


そして始まったベッド生活。何もやることが無く過ぎる時間。そして一週間後・・・


俺は退院した。

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