【第二十七話】ひとりで納品できるもん
みんなー元気ー?今日はクエスト二日目。天気は晴れ、絶好のクエスト日和だと思う。
それにしてもポチの奴今日も来ないなんてなぁ・・・
何でも昨日とは別の約束らしい。俺の知らない間にどんだけ知り合い作っているんだよ。
もういい!俺は一人でクエストをクリアしてやる!もう飼い犬に頼っていられない!いや、飼い犬に頼る時点でなんかダメな気がするけどさ。
そんなこんなで今日も今日とて薬草採取。だけど今日は秘策がある。そう、前にも使った焚き火作戦だ。これでもう少し森の奥まで入って行けるハズだし、前に焚き火した時よりも木が全体的に低いからより遠くまで行けるハズだ。
「こんなもんでいいかな」
そこら辺から枝を集めて火をつける。
よしよし、燃えてるな。それじゃあ薬草を探しに行こう。
この辺は昨日も来た場所のハズだ。昨日はここで採取したからあまりここには残っていないハズだ。
取り残して無いか軽く確認しながら森の奥まで進んでいく。昨日は気付かなかったけど小さめの薬草がそれなりに残ってる。流石に小さいから採らないけど昨日は本当に気付かなかった。節穴アイと呼ばれてしまう。
よし、ここからは本当に知らない土地だ。振り返ればまだ煙も見えてるしここらで薬草を採っていくか。
そうそう、今日は来る前にカゴを買ってきた。昨日採った分でもリュックが半分ぐらい埋まったし必要かなと思って買ってきた。そう、だからお金が無い。何としても今日中に終わらせてお金をもらわなければ今日は飯無しなんて事態になりかねない。
でも、考えてみれば森林の深部だっけ?とりあえず崖の上から降りてきた後すぐに道を見つけたから崖の下、つまり今いる様な深部じゃないところ(近域とか言っていた気がする)は詳しくは知らない。キリアム先生が深部と近域で生息する生物が全然違うと言っていた気がするけど具体的な話は話に付いて行けてなくて良く分からない。一緒に授業を受けてたクレアに今度聞いてみるか。
それはそうと薬草だ。お、これは依頼にあったやつだと思うぞ?、確かヨモロ草だっけか?図鑑によると傷薬の材料になるらしい。あとこれはラーニュ草、確か麻痺毒の中和だったか?図鑑には「あのスカルスパイダーの毒を中和できる」って書いてあって、「どの?」ってなったのを覚えてる。
ん?、なんか茂みが動いたぞ?生き物かな?遠巻きに見てみるか。危なそうな奴ならできるだけ近寄りたくないけど。
あ、居たな。あいつはなんていうか・・・ヤマアラシか?なんだかトゲトゲしてる。あんなの崖の上では見なかった。もう一体あっちに居るけど、あれはこの前ジーク君が戦ったエルダーアッシュハウンドだな、この森のせいなのかこの前に見た奴よりも大きい。見たところエルダーアッシュハウンドがヤマアラシを狙ってるみたいだ。おっ、ヤマアラシに向かって走り出した。涎もたらしてるし食う気満々だな。ヤマアラシも近付いてきた敵に気づいたのか針を立て始めた。エルダーアッシュハウンドは何とかヤマアラシを狙っているけどヤマアラシは守りを固めて攻撃を許さない。両方動けずに数分が経った。・・・これはヤマアラシの勝ちだろう。このままヤマアラシが針を立て続ければ流石に戦意を喪失して諦めるだろう。だがヤマアラシも最後まで油断できない。薬草採ってる場合じゃねえぜ!
その時だった、片方が均衡を破った。動き出したのはなんとヤマアラシ、エルダーアッシュハウンドに向けて
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よし、こんなものかな。カゴの八割は薬草が詰まってる。こんだけ採れば十分だろ。この前の林よりも薬草が密集していた気がするな。流石バルド大森林ってことなんだろうか。やっぱポチが居なくても大丈夫だったな。さて、煙の方角はっと・・げ、結構煙の勢いが弱くなってる。もううっすらとしか見えない。帰る時間も考えるとやっぱりそろそろ戻んないと。
焚き火に戻り、そこに数人誰かが居るのに気づく。
「あれ?ルガードさんじゃん。」
「お前はっ、ユウシか!」
げっ、て顔でこっちを見るのは止めていただきたい。
「どうしてここにいるんだ?」
「いや俺は薬草取りにさ、ルガードさんこそなんでここに?」
「バルド大森林の道の真ん中にマンイーターが根を張っていると通報を受けてな。駆除をしていたんだ。」
確かにルガードさんの後ろに居る人達には見覚えがある。一人俺だって気付いてポチのことを探している団員が居るけど放っておこう。
「そして煙を見て火事ではないかと思って駆けつけた。」
やっべ、俺の火があらぬところに迷惑をかけている。
「お前が付けたのか?」
「ええ、まあ。」
「はあ、火事ではなかったからいいが火の始末はしっかりとしろよ?だがここに火を点けてどこに行ってたんだ?」
「この焚き火の煙を目印にして森の奥の方まで。」
「はあ、そうだったな。お前は丸腰でバルド大森林を歩けるんだったな。」
ルガードさんは呆れた顔でこっちを見ている。
「でもルガードさんだって生身とはいかないでもここに居れれるんでしょ?」
「それはそうだが移動する際は魔物に追われても早く移動できるように馬に乗るものだ。お前みたいに森の中を一人で歩こうなんて思わんな。」
人を変人みたいな目で見ないでほしい。
「そうだ、いまから帰るんだったらついでに城塞都市まで連れて行ってくれません?」
馬が控えてるのが奥に見える。
「はあ、仕方ない。送って行ってやるか。」
馬に揺られながら悠々と城塞都市に戻った。
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「すみませーん。」
ギルドにやってきた。目的はこの前余った薬草が売れたかどうかの確認と昨日今日で集めた薬草の納品の為だ。今日はクラリーチェさんは居ないみたいだ。
「戻ったのかい。」
サラさんに薬草のカゴを渡す。
「またたくさん集めてきたね。確認するからちょっと待ってなさい。」
サラさんが俺の薬草を数え始める。
「依頼は達成だね。ずいぶん薬草が余ったけど前回と同じような感じでいいかい?」
「はい、大丈夫です。それよりこの前の薬草、どうなりました?」
「ああ、全部捌けたよ。今回の金額は前回の分と合わせたものだから。」
そう言われて目の前に紙と袋が置かれた。
俺は受け取ると一先ずギルドを出る。さて、気になるお値段は?・・・・金貨2枚!?あれで?一緒に渡された明細書には前回の薬草の残りでクエストクリアが一個と残り市場で金貨一枚、今回のクエストの報酬が金貨1枚と書いてあった。・・まじか、これなら今回のあまり分にも期待だな。
うかれた俺はスキップで寮まで帰った。
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