【第二十五話】依頼達成
「あばらの骨の何本かにヒビが入っていたみたいだけどそれ以外は何ともないわ。」
「有難うございます。」
「いいのよ、ジークちゃんを助けてくれたんでしょ?」
昨日の一戦から夜が明けて、今は村長の家の一室、昨日、俺達が止まる予定だった部屋にいる。あの後ジーク君を村まで運び、ジーク君を村長夫人に見てもらっていた。まさか村長夫人が療術師だったとは。
「ジークちゃん、まだ寝てるけどあれは魔力切れね。魔力が回復するまではあのままよ。もう少ししたら起きると思うけど安静にと言っといてね。」
それにしても昨日の戦いは凄かった。この世界に来て初めてゲームに出てくるような魔法を見た。いや現実だけどさ。
「ポチー、いじけてないでこっち来いよ。」
ポチは今いじけてる。なんでも俺のピンチに家で寝ていて駆けつけられなかった事の自責の念と、そもそも俺がポチを起こして連れて行かなかったことに対してポチは拗ねているのだそう。
「だってごしゅじんがおこしてくれなかったんだもん」
お前は寝坊した小学生か!でもはっきり言って子犬一匹が居たからって何か変わっていたかって言うと絶対に変わってない。
「悪かったから拗ねてんなよ。」
だめだ、機嫌が直る気がしない。
そんな時ジーク君が目を覚ました。
「はっ・・ここは・・?」
「お、ジーク君起きたか?」
「ここはどこです?昨日は依頼をこなしてて・・そうだ!依頼は、依頼はどうなりましたか!?」
「おちつけって、まずここは村長の家だ。依頼は成功、ジーク君が魔法を使ったんだろう?」
「最後の方は記憶が曖昧で・・ユウシさんが煙玉を投げた所までは憶えています。ですがその後はうっすらとしか・・」
「じゃあ魔法を使ったところまではっきり覚えていないのか。依頼を続けさせてくださいって村長に頭下げてたのは?」
「そ、それは憶えてますけど・・掘り返さないでくださいよ!ちょっと恥ずかしいんですから。」
「いやぁ、それにしても元気になって良かったよ。ちょっと村長夫人呼んでくるから待ってて。」
無事目が覚めて良かった。
「村長夫人ジーク君が起きました!」
「あら良かった。今行くわ。」
村長夫人と部屋戻る。
「あら元気になって良かったわー、どう?傷む所は無い?」
「ええ、おかげさまで。ありがとうございました。」
「いつまでここに居るつもりなの?」
「もう依頼はこなしましたし今日にでもここを発とうと思ってます。」
「怪我してたのに大丈夫なのか?」
「村長夫人のおかげで傷はもうありませんし大丈夫ですよ!」
ジーク君が元気そうに笑う。
「じゃあそうゆう事ですのでお昼の後に帰れるように準備お願いします。」
「分かった。昼の後だな?」
俺は自分の荷物、そして採った薬草をまとめてここを出る準備をした。
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「では、お疲れさまでした!」
村の入口、この村に来た道の前で村長達に挨拶をした。
「おう、これ持っていけ。」
村長が俺達に袋を渡してきた。
「これはワイルドボアの肉だ味付けして焼いてあるから帰りにでも食え。」
「有難うございます。」
早速袋を開けてみる。葉に包まれた肉が見えた
「あれ?俺の袋の中にお金が入ってますよ?」
中に大銀貨一枚が入っている。
「この人ったら不器用でねぇ、口には出さないけどジークちゃんを助けてくれたユウシ君に感謝しているのよ。」
「中身は少ないがまあ、煙玉代として取っておいてくれ。」
でもこんなに煙玉高くなかったよな?善意として受け取っておこう。
「ではこれで!」
俺たちは来た道を戻る。この林をこえて少しすれば停留所があり、そこに日に二度馬車が通るのだそうだ。
「ジーク君、ところで今回のクエストの報酬ってどのくらいなんだ?」
他意は無いが聞いておきたい。
「最初の、ワイルドボア一体の討伐が大金貨1枚、それに一頭目の討伐でもう金貨3枚ですかね。」
一日で大金貨1枚って割のいいバイトなのかな。今回は二頭目が居て死にかけてたけどいつもは一頭の討伐とかだったらしいし。
「討伐する対象によって依頼料が違うんです。今回のワイルドボアは一頭で依頼料が大体金3枚が相場です。今回は畑の被害の対処でしたので、そのうちの半分は国が負担しているので村が払う金額は大金貨3枚、僕への報酬は依頼料のうち大銀貨1枚はギルドの運営費に充てられてその他が貰えるんです。」
じゃあ今回はワイルドボア二頭で依頼料が金貨8枚だからそれにギルドの取り分引いてクエスト報酬は・・・金貨5枚?つまり5万円!?一日でそんなに稼いだのか!?
「ジ、ジーク君金持ちだね。」
「確かにお金だけ見れば魅力的ですけど今回みたいに死にかける時もあれば本当に死んでしまう時も良くあります。多いのは銅級に上がって気持ちが大きくなって今までよりも敵が強い所にに行ってしまうパターンですね。特にバルド大森林は冒険者にとっては魅力的ですからよく冒険者で行方不明者が出ます。」
なんだか森を離れてしばらく経つけど森を知るほど恐ろしい所に聞こえてくる。
「それに剣や装備、消耗品は自分で用意しないといけませんしね。」
俺の煙玉も自分で買っているわけだしこういうお金もクエストの報酬から出さなくちゃいけないのか。
そうだずっと気になっていたことがあったんだ。
「ジーク君ってさ、学校はいいの?」
俺とクレアで町を周ったのが五日前、そしてジーク君に連れられてクエストに出たのは昨日、二人は同じ高等部なわけだし休みがずれているはずもないよな?
「あれ?今夏休み期間じゃないですか?」
夏休み?確かに元の世界では夏休み真っ只中だったけどここはそこまで熱くない。特に林の中は半そでじゃ少し寒いくらいだった。
でもこの前ポチと遊んでいた初等部の子供たちは確かに制服を着ていた。
「サマースクール中の初等部の子たちや補修者でも無い限り授業は無いと思いますけど?もしかして夏休みってこと知らなかったんですか!?」
まずい、コネで寮にいることがバレたら後でめんどくさいことになりそうだ
「いや、ほら、ジーク君は補修とか無いのかなーって」
「失礼な!僕はちゃんと授業も受けてますし成績も上の方なんですよ?」
危ない、なんとか気を反らせた。
「じゃあこの前校舎の近く歩いていたのは?」
「あれは図書館でアルバイトした帰りで・・・」
っていうことはジーク君ピーター書士と知り合いってことなのか?そうゆうの早くいって欲しい。
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「あっ!馬車が来ましたよ!」
ジーク君の指さした方を見ると馬車が近付いて来ているのが見えた。
「おー、昨日の。どうでした仕事の方は?」
よく見ると昨日俺たちをここまで連れてきてくれた馬車と同じだった。
「おかげさまで大成功です。」
ジーク君とポチと馬車に乗り込む。
馬車に揺られること行きと同じくらい、ようやく城塞都市の門が見えてきた。
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「おお、戻ったか!依頼は成功したようだな!」
ギルドに戻るとクラリーチェさんが出迎えてくれた。
「じゃあ僕のクエストの報告してきます。」
「ユウシは薬草の採取だったかどれどれ?・・これは!またずいぶん採ったな。」
クラリーチェさんが俺の採ってきた薬草を見て驚いている。
「クエストは確かミジロク草十五株の採取だったはずだが・・」
そうだったのか。俺はクエストのことをすべてジーク君に任せてたから肝心の自分のクエストの内容を把握してなかった。
「ジークめ相当手伝ったな?まあいい、クエストクリアの方法は分からないだろうから私が教えよう。付いてこい。」
クラリーチェさんに連れられてギルドの奥に向かう。
「サラ、新入りのユウシだ。」
サラと呼ばれた物体を見てギョッとする。
「クラリーチェさん、この人って・・」
「紹介する。うちの事務員のサラだ。クエスト出発前には会わなかったんだったか。」
紹介されたそのサラという女性は俺がよく行く食堂で働いているおばちゃんにそっくりだった。
「あの、学園で働いてたりします?」
「ああ、私じゃないけど、いとこが食堂で働いてるね。」
なんだいとこだったのかそれにしてもそっくりだ。
「おい!話が進まん!いいか聞け?ここでクエストの受注・報告をする。ほらお前の薬草を出せ。」
自分の薬草をカウンターに出す。
「えー、ミツヤユウシのクエストは・・・ミジロク草十五株の納品。結構取ったね。じゃあまずクエストの報酬、大銀貨1枚ね。」
一日で五千円か・・・しょっぱいな。
「他のミジロク草は他のクエストがあればそれに、無ければ市場に出しておくから数日後に来れば報酬が出るはずだ。」
なんだ、報酬は今貰えないのか。
「あれ、報告してたんですか。戻ったら二人ともいないので探しちゃいましたよ。」
「おや、入れ違いだったか。とにかくユウシよこれで報告の仕方は分かったな?」
「ありがとうございました。」
「これからもギルドへの貢献よろしく頼むぞ。」
俺はジーク君に馬車の運賃を返し寮にポチと戻った。
こうして俺の初めてのクエストが終わった。
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