【第十五話】四元素魔法

 学園で暮らしはじめて早三日目、この世界の文字がだんだん読めるようになってきた。え?何でこんなに早くこの世界の文字が読めるようになったのかだって?この世界の文字は日本語に似ている。1つの発音に一文字って言う感じだ。最初に借りた本は絵本と

 文字の形さえ覚えてしまえば直ぐに書けるようになりそうだ。

 驚いたのはポチだ。俺の勉強を横から見ているだけなのに俺よりも早く理解していた。天才犬だとは思ってたけどポチに先を越されたのはなんだか悔しい。

 そんなこんなでやっと読み終えた本のタイトルが『犬でもできる!大陸語』だったときにはフクロウに少し悪意を感じた。


 まだ三日目だが、ここの生活は快適だ。朝昼晩と自分で食料調達をしなくても学食があるからお金さえあればなんとかなる。今は金も飯代にしか使わないしな。


「勉強は進んでいますか?」


 図書館で勉強中、キリアムさんが顔を見せた。


「はい、ゆっくりですが読めるようになりました。今はピーターさんに進めて貰った童話?を読んでいるところです。」


 今読んでいる『北の魔法使い』という本の表紙を見せる。


「懐かしいですね。私が子供の頃からあるお話です。炎の賢者が魔法で北の土地に春を作った話ですね。」


「はい。でも魔法の事をそんなに知らないんでいまいち何をしているのか分からないんですよね。」


そういえばセオドア爺さんも七賢者とか言われてたけど関係あるのかな?


「まあ、魔法がどういうものか知らなければ伝わらないかもしれませんね。」


「もしよかったら魔法について教えてもらえませんか?」


「良いでしょう。ただし、ユウシくんは教わるのですから私の事は先生と呼ぶように。」


「分かりました、キリアム先生。」


「よい返事です。分からないところがあったら聞いてくださいね。」


 こうしてキリアム先生の授業が始まった。


「それでは、まず『属性』から。『属性』は基本は火、水、土、風、聖、闇、無、の七つの属性が基礎となります。すべて魔素の操り方で変わります。」


操り方か・・・だから魔素を持てない俺は「魔法を使えない」って言われたのか。


「まずは無属性から説明しましょう。無属性はずばり魔素の「循環」です。体の中で魔素を循環させて能力を上げる、なんていうのが代表的な使い方ですかね。騎士団の方々は特にこの無属性の魔法を収斂しています。」


なるほどRPGでいうステータスアップの魔法か、代表的な使い方っていうことは他にも使い方があるってことかな?


「次に火属性の説明ですがその前に、火、水、土、風の魔法は4つ合わせて四元素魔法とも呼ばれていて、その中の火属性の魔法は先ほどユウシ君が見ていた北の賢者の話でも出てきているはずですが、魔素を使って熱を操るのが火属性の魔法ですね。先ほど何をしているのか分からないと言っていましたが、炎の賢者は「火の魔法によってその地域の温度を上げていた」ということですね。」


「童話になるぐらい凄いことなんですか?」


「そうですね、分かりやすいように例えるとコップ一杯の水を15度から20度に上げるのと0度から20度に上げるのだと後の方が大変なのは分かるでしょう?それをとても広い範囲でやっているのです。一般的な火属性魔法の使い方だと「火をおこす」というのが普通ですが、どんなに大きな火をおこしても極寒の土地に春を迎えさせるなんてこと出来ないでしょう?」


「じゃあ北の魔法使いはありえない様なことをしているってことですか?」


「まあ、童話ですからね。ありえないことは起きますよ。」


まあそうか、日本だって漫画の中じゃ忍者が忍んでなかったり、ゴムゴムだったりカメハメだったりしてる。


「次に水属性です。水属性魔法は液体を操る魔法です。細かい所だとポーションを作る時や、大きなところだと川の氾濫を止めるためだったり使用する場所は多岐にわたりますね。他にも水の浄化や酒造にまで使われます。」


水属性は器用って感じか?まあ水の魔法って色々使いそうだもんな。この世界でまだポーションとかまだ見てないな。魔導区に工場があるってこの前聞いたし見学しに行きたい。


「次は土属性、土属性の魔法は個体を操る魔法、と言いたいところですが名前の通り土の属性魔法、操るのは無機物のみです。建築や鉱物の鑑定なんかも土魔法ですね。因みにこの都市の城壁あれも土の魔法で作られているんですよ。」


「あんなものまでできるんですね。」


鉱物の鑑定とか、建築とか、元の世界でもそうだったけど土の魔法ってなんだか地味だよな。他は身体強化だったりポーション作ったりしてるのに。


「そうそう、さっきの話の炎の賢者は想像の人物ですが、七賢者と言って七つそれぞれのの属性魔法で最高位の魔法使いがそう呼ばれているんですよ。」


「セオドアさんも確か賢者なんですよね?」


「よくご存じですね。セオドア様は七賢者の中の土の賢者その人なんですよ。因みに城塞都市の城壁は過去に森の魔獣の襲撃で2割程崩れたことがあるのですがセオドア様はそれをたった一人で直すほどの実力を持っているんですよ。」


城壁ってこの都市を囲んでるあれか?この都市全体をまだ見てないけどあの壁がバカでかいのだけは分かる。へーあの爺さんそんなにすごい人だったんだ。土属性魔法って実はすごい?


「風属性魔法は空気を操る魔法です。使い方はそんなに広くありませんね。風魔法の通り風を作り出してそれに乗ったり風の刃を敵にあてたり、そんなところですかね。」


「空を飛ぶのなんて想像できませんけどね。魔法使いの人たちはみんな飛ぶんですか?」


「とんでもないですよ。魔法使いの中でも自由に空を飛べる人なんて極僅かです。主に空を飛ぶのはそういう動物やモンスターですね。風魔法の優秀な使い手ならユウシ君はもう会っているはずですよ?」


え?誰だろう。すれ違った程度の人なんて分かんないしなー。話したことがあるのはセオドア爺さん、キリアム先生、後は事務室の人に食堂のおばちゃん、ここの受付の人ぐらいか?本当に分からんぞ?もしかして本当に食堂のおばちゃんなのか?

すると頭上から、


「ホー、私の話をしているのかな?」


フクロウ書士ことピーターが俺の頭に降りてきた。


「ピーターさんが優秀な風の魔法使いなんですか?」


「そうですよ?さっきからずっとピーターさんがこちらを覗いていたので紹介しなくては、と思いましてね。」


「風魔法を使った飛行は風で羽根が舞うからと図書館では禁止されているのだがな。」


ハッハッハとフクロウジョークを飛ばすピーター

そうだったんだ。確かにピーターに初めて会ったとき、ポチも「強い」みたいなこと言ってたもんな。セオドア爺さんも強いって言ってたしポチはそういうのが分かるんだな。


「そういえばさっきから気になってたんですけど『動物』とか『魔獣』とか『モンスター』とか言い方が違う気がするんですがわざとですか?」


「その話をすると長くなるので明日、改めて今日の続きと一緒に話しましょうか。」


「分かりました。今日はありがとうございました。」


ちょうどよくチャイムが鳴った。キリアム先生は「これから授業なので」と足早に去っていった。


「キリアムはああ見えてもの毎年バルド大森林で行われる学生の戦闘実習の主任だ。森やそこに住んでいる生物に詳しいし、キリアム自体もなかなか手練れだぞ。」


ピーターが補足を入れてきた。そうなんだ、本人はなんだか「優しそうな英語教師」みたいな感じだけどな。明日も楽しみにしていよう。

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