【第十話】守護騎士と拘束
「?、本当にここら辺のものでは無いようだな。我々は城塞都市フォーレの守護騎士だ。」
・・・聞きなじみの無い単語が出てきた。
「城塞都市フォーレの守護騎士?」
フォーレなんて言葉聞いたことがない。っていうか俺は森のこと以外全く知らない。まあ森もそんなに詳しくないけど。それにしても城塞都市とか守護騎士とかなんだかカッコイイな、おい。
「フォーレを聞いたことがないとは惚けているのか、本当に異世界人なのか。まあいい、とにかく拘束させてもらうぞ。」
拘束されるって、リュックを渡すときに出したポチをどうしようか、今は俺が抱えてるけど馬に乗るなら抱えるのは危ないと思う。
「犬はどうしたらいいですか?」
「犬だ?しょうがない、俺が預かろう。」
俺のカバンを調べた男が突然言いだす。ははーん、こいつ、ケモナーだな。犬を触りたいって顔に出てる。うん、ポチの安全のためにもそうしてもらうしかないな。ポチを起こそう。
「ポチー、起きろー」
「むにゃむにゃ、なんだごしゅじん。・・・はっ、誰だこいつら?敵か?」
寝起きのポチが騎士達に向かって唸る。
「ほう、喋る犬か。珍しいな。」
騎士のリーダーがそう言った。もっと驚かれると思ったけど「へえ、カメレオン飼ってるんだ」みたいなテンションで言われた。ポチみたいなのがちょくちょく居るってことか?
「城塞都市フォーレの守護騎士だってよ。敵じゃないみたいだ。」
ポチをなだめる。
「じょーさいとし?なにそれ?」
まあ山犬ですし知らなくて当然じゃないですかね。
「ポチ、今から馬に乗るからあの人と一緒にいな」
ケモナー・・じゃなかった、騎士にポチを渡そうとする。
「嫌だ!ポチはごしゅじんと一緒にいるんだ!」
騎士に牙を剥きながら腕の中で暴れるポチ。それを見てあからさまに落ち込むケモナー騎士。
「そうは言ったってな・・リュックの中でじっとしてられるか?」
「任せろ!ごしゅじん。」
ポチの方は大丈夫そうだ。
「本人・・もとい本犬がそう言ってるんでリュックに入れて連れて行っちゃだめですかね?」
「ま、まあその犬が馬の上で暴れないのならいいだろう。」
手枷をされた後リーダーの馬に乗せられて体を隊長とロープで固定させられた。
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絶賛拘束中、どうも三谷夕士です。
馬に揺られて早一時間程。最初の方は初めての乗馬で若干パニックなポチをなだめたり、その後慣れてきたポチのハイテンションを鎮めたり。いろいろあった。ポチは暴れはしなかったもののパニックの時には「ごしゅじん!?本当に大丈夫なのか?」と叫び、慣れたら慣れたで「わははは!ごしゅじん、何もしてないのに早いぞ!」と叫びとにかくうるさかった。騎士の人たちもさぞ迷惑だっただろう。
ポチも叫び疲れたのか寝息を立て始めたころ、ふと思った質問を聞いてみた。
「そういえば、なんで言葉が通じてるんですかね?」
騎士達は見た感じ洋風の顔立ちなのに思いっきり日本語を喋っていた。最初から話の通じていないラノベやゲームなんてほとんどないから話が通じて当たり前だと思ってたけどこれは現実だし、最初は何かの魔法で、とか考えたけど魔法は俺には使えないし神の祝福が~みたいなのは無いだろうし。本当になんで言葉が通じるんだろう。
「知らん、大陸語はこの大陸の人間なら大体はしゃべる事が出来るだろう。」
日本語じゃなくて大陸後か・・・謎は深まるばかりだ。
「そろそろ休憩するか」
出発から1時間半くらいたったころリーダーがそういった。
馬から降ろしてもらい辺りを見回す。景色が俺のいた森とは全然違う。池があって今はそこで馬が水を飲んでいる。上がどれだけ禍々しい場所だったかここにと比べると良く分かる。
俺が逃げ出さないよう見張っていた隊長が俺に呼びかける。
「馬の休憩が終わったらすぐに出るぞ。ここはまだ危険だ。」
・・・ここもまだ危険らしい。
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途中でもう一度休憩を挟みつつ、合計で四時間ほど馬で移動するとやっと木がまばらになり平原が見えてきた。どんだけ広かったんだこの森は。もう日も傾いてきてるぞ。
「やっと森からでた・・・」
「森から出られればもう安全だ。ここからもう少し行けばフォーレが見えてくる。」
隊長のいう通り5分程で大きな壁に囲まれた建物の集まりが見えてきた。
おお、あれが城塞都市か。・・・でかいな。この距離であの大きさなら15メートルくらいあるのかな?城塞都市、楽しみだ。
壁の中へ入る頃にはもう夕暮れ時だった。俺は今、取調室にいる。
町の中に入った後、すぐにこの騎士団の建物だというところに連れてこられた。
「俺の名はアルバート・ルガード、この都市の騎士団の対外部隊第一小隊の隊長をしている。お前の名前は・・ミツヤ?」
「三谷夕士です。俺はこれから何をされるんですか?」
「ただ質問をするだけだ。まずはお前はなぜあそこに居たのだ?」
「信じてもらえないかもしれませんけど俺、異世界から転移してきたんです」
「真剣に答えろ!」
「真剣に答えてますって!」
それからルガードに出身地や身分等、色々聞かれた。もちろん本当のことしかしゃべってはいないが終始疑うような目で見られていた。そんな目で見られてもしょうがないじゃん本当のことなんだもの。
「確認するが今までの証言は本当に真実なのだな?」
まだ疑うか!
「本当のことしか喋ってませんって!いい加減信じてくださいよ!」
「そう言われても簡単には信じられるものではない。その、異世界転移?など聞いたこともない。」
「そりゃあ、俺も異世界転移するまで異世界なんてないと思ってましたけど、でも実際にこうして異世界転移してるじゃないですか。」
わからない人だなぁ!
「それが信じれれないと言っているのだ!」
ゴホン、と咳払いして話を続ける。
「とりあえず、お前の身柄は預からせてもらう。お前の身の証明が出来次第、解放しよう。」
「え?それって牢屋に入れられるということですか?」
「安心しろ牢屋ではない。牢屋ではないからおとなしくしていろ。」
取り調べが終わったあと半ば強制に部屋に入れられた。牢屋ではないと強調していたがこの部屋、普通の部屋に見えるが窓には格子、ドアは外側からカギが掛けられていて脱走出来ない作りになっている。
・・・うん、これ牢屋だな。
ちなみにポチとは一緒にいる。一緒の部屋にいたいと頼んだら、「子犬を預かる場所などない!」と承諾をもらった。そのポチは状況が把握出来ていないのか今は部屋の隅で固くなっている。
「ごしゅじん、ここどこだ?」
尻尾が下がってる。不安なんだな。俺もこの先どうなるのか不安だよ。
ポチを撫でながら時間を過ごしていると、コンコンとノックが聞こえる。ガチャ、とドアが開き兵士が「夕飯だ」とだけ言って手に持っていた物を床に置いてすぐに出ていった。 嘘、今置いてったのパンとスープじゃない?
近寄って確認する。やっぱりだ。なんだなんだとポチも近付いてくる。
まずは一口スープをすする。
うめぇ!まず塩の味がある!何日ぶりの塩味だろう。具はニンジン、じゃがいもと玉ねぎ(らしきもの)だが、それでもちゃんとした野菜が入っているだけ森の飯よりもましだ。ポチにはパンを半分ちぎって渡す。
ポチはそのパンをすぐにペロッと食べ終わると次はスープを物欲しそうな目で見てくる。
「玉ねぎ入っているしダメだぞこれは」
しょうがない。残っていたパンを一口だけ食べて残りをポチにやる。焼きたてではなかったけどやっぱりおいしい。もっと食べたかったな、パン。これは明日の朝食も楽しみだな。贅沢を言えばトーストが食べたいな。バター塗ったやつ。
久しぶりの料理らしい料理を食べて一息着いているとまたコンコン、とノックが聞こえた。
外から「面会だ。」と声がした。
面会だ?この世界に面会に来る人なんていないし、誰だろうか
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