【第七話】脱出開始
ポチと歩き始めてもう4時間は経っただろうか。今のところは森の中には険しい道は無いけど、いかんせん舗装されてないから疲れてくる。歩いてる間に鹿だとか4時間前までは見たことない動物を見たけど、特に危険はなくここまで来れた。日ももう登り切っている。
「ふう、そろそろ昼飯かな。何食べようかな、そう言えば芋とかもあったな。食材がいろいろあるのは良いことだ。」
川辺に腰かけてカバンから芋を取り出す。そこでやっと気づいた、
「火、無えじゃん。」
しまった!遭難したときも散々火がなくて苦労したのになんで忘れるかな、俺。
一昨日に採った野草は、確かに生でも食べれる。一昨日に食べた感じ、たぶん茹でてえぐみを取った方が美味しい物がほとんどだ。
仕方ない。リンゴを二つ出す。片方はポチが持ってきた時の歯形が付いてる。早く食べないと、傷から腐ってしまう。ナイフで皮を剥いて一個をポチにやる。俺は何日連続か分からないリンゴでちょっとうんざりしてるが、横のポチはすっかり好物になったのか、夢中で食べてる。
食後、一息付いてまた出発することにした。因みにポチはお昼寝モードなのかウトウトしてたから今は俺が担いで移動してる。よかったー、ポチが子犬で。リュックで両手が開いてるのも良かったよな。ポチが起きるまで立ち往生するところだった。
昼飯から3時間は歩いてる。なんだか生えてる木とか草とかの一部が少し変わってきた気がする。どれだけの距離歩いたのか分からないけどようやく森を抜ける実感が湧いてきた。
腕の中のポチがもぞもぞ動き出した。
「やっと起きたかポチ、降ろすぞ?」
かがんでポチを腕から降ろそうとするけど、中々降りない。
「勘弁してくれよ、俺だって疲れてるんだからな?」
渋々といった感じでポチが降りる。分かればいいんだよ分かれば。
少し歩くと、今まで見なかった、それでいて懐かしい木を発見した。そう今目の前に現れた木々、それは「竹」だった。
「おおー!竹だよな?こんな世界にも竹があるなんてな」
日本人だから知ってる。竹はいろんな道具になると!
「今日はここらへんで休むとして、竹でなんか作ってみるか。」
早速近くの竹を切り倒しにかかる。幹の大きさは手で覆える程度だけど、得物がナイフなのもあってか中々切り倒せない。二十分は経っただろうか、やっと一本を切り倒した。元の世界で竹を切ったことは無いけど、こんなに硬いもんなのかな?そこら辺の木よりも確実に硬かった。さて、まずは節を一個分切り出す。そこに穴を一か所開けたら水筒の完成だ。やだ簡単。これから必要になるかなって思って作ってみた。当分は使わないかな?とりあえず水を汲んでみる。ちゃんと貯められるな、水漏れは無い。あとは竹を立てに割って「串」とか「箸」とか・・・しょうがないじゃん、加工技術が無いんだから!作れるもんなら傘とかザルとか作ってみたいよ俺だって!
一通り竹の加工が終わったところで、あとは寝床づくりだ。木の上には登れないし今日は基地を作ってみる。竹を縦に割いて何本も棒を作ったらそれを組んで小さなテントの骨組みを作り上に竹の葉をかぶせて完成。言葉にするだけなら簡単だけど完成したころには、もう日が暮れかけてた。おかげで最後の方は竹を切るのが早くなってた。
「よかった、夜に間に合って。」
完成したテントにポチともぐりこむ。一人と一匹がやっと入れるスペースしかないけどそれで十分だ。即席テントの使い心地を確認したところで、夕食だ。
「またリンゴか・・・」
ポチはリンゴという単語を聞いて尻尾を振ってるけど俺はそれどころじゃない。とりあえずいつものようにリンゴを剥くためにナイフを取り出す。そろそろこのナイフもフルーツナイフに改名した方がいいかもしれない。竹を切って木屑やらが付いてるフルーツナイフを川で洗う。飯を待てないのか、ポチもついてきてる、しょうがないなあ。ここでリンゴ剥くか。もう日が暮れていてあまりカバンの中身が見えない。カバンの中に手をつっこんでリンゴを探す。
「うーん、あと四個くらいは残っていたはずだよな」
手に硬いものが触れるそれを取り出してみると最初からカバンの中に入っていた手のひらサイズの赤い石。
「これも使い道無いし捨ててもいいかもな。新しく水筒とか作ったし。」
今は用がないので横に放る。偶然ナイフと当たったのかカチンと音がした後、その周りが明るくなった。
「ん?・・・もしかして?」
ナイフとその石を打ち付けてみる。ガチッという音と一緒に火花が飛んだ。
「おお!この石ってもしかして火打石か?」
俺の中で、いらない石ころから超重要アイテムにランクアップした。やっと火が点けられる・・・。一気にサバイバル生活が明るくなった、文字どおり。よーし!早速芋焼いてを食べよう。
竹の木屑を集めて火打石を使ったら簡単に火が点いた。ライターの時はもっと時間かかった気がするけどなー、この世界のアイテム補正とかだろうか?拾った竹の枝や切った竹の残りなんかでたき火を作った。芋を入れて焼き芋にするんだ。俺が作ったたき火にポチが若干ビビってる。そういえばポチが居る時にたき火したことは無かったかも。ポチにはリンゴを剥いてやり、俺は芋をたき火の中に入れる。・・・そろそろ焼けたかな?こんな時に作っといてよかった竹製の串。芋に突き刺してたき火から取り出す。うんいい感じだ。リンゴを食べ終わったポチが興味津々に見てくる。これは俺んだぞ?
「うまい!じゃがいもと里芋の間みたいな感じだろうかとても美味しい。」
もうリンゴじゃない食べ物ってだけでも素晴らしいのに。
横でポチが「お座り」の体勢でよだれを垂らしてる。わかったよ、やるよ。だからそんなに見つめてくるなよ。よく冷ましてから一かけらポチに差し出す。手の上からすぐに芋が消えた。
「ふー、満足。」
今日はたき火はそのままにして寝るか。木の上じゃないから少しでも動物が寄ってこないようにしないとな、あの火を出すトカゲ、略してヒ〇カゲは特に獰猛じゃないしな。じゃあ寝ることにしよう
「お休み、ポチ」
テントに入って目を閉じた。
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ズン、ズン、
ポチが寝静まったころ足音がして、急にたき火の明かりが消えた。不思議に思ってテントから外を覗くと目に入ってきたのは、数匹の小さめのヒ〇カゲと、
元の世界のよりも断然大きい巨大な虎だった。見た感じトカゲを食べている。あの大狼と比べるとこっちの方が小さいが暗闇の中、ギラギラ光る目が怖い。
・・・見なかったことにしよう。ここで見つかったらどうあがいても死ぬしな。うん、巨大な虎なんて見てない、見てない。・・・俺も肝が据わってきたな。
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