第7話

事件は暑いある日起こった。


孫娘は、隣の家の一つ違いの女児とその姉と、ビニールプールを広げて庭で水遊びをしていた。


何故?どうして?

子供がする事など高が知れている……。

だから絶対に違う……。

今でもそう思うしかない。

隣の奥さんと会話を楽しみながら、子供達が楽しく遊ぶ姿を見ていた、嫁の沙都子もそう言っていた。


仔猫が庭に入って来て、とうてい捕まるはずのない子供に捕まった。

話に夢中の母親達は、その事に気づきもしなかった。

たぶんわかっていたとしても、我が子達があんな事をするとは思いもしないだろうから、仔猫を抱いていたとしても気にとめていなかったろう。

それを知ったのは、隣の姉の女児が母親に


「仔猫ちゃんが動かなくなった」


と伝えに来た時だ。


その時やっと母親達は思い腰を上げで、プールが見える部屋から庭に出て来た。


「どうしたの?」


隣の矢部さんは、ぐったりと横たわる仔猫を見て言った。


「仔猫ちゃんが入って来たら、真央ちゃんが水をかけたの」


「お水を猫ちゃんにかけちゃダメでしょ?」


矢部さんはお姉ちゃんに言った。


「だって、真央ちゃんのおばあちゃんが、いつもそうしているって……」


矢部さんと沙都子は呆然とした。


「仔猫ちゃんが喜ぶって、真央ちゃんずっと、ホースのお水かけてた……」


「お顔に?」


「うん」


お姉ちゃんはしくしくと泣きだした。


すると呆然とする母親達の前を横切って、母猫が仔猫を咥えて逃げて行った。


「大丈夫よ。あんな事くらいじゃ死なないから……」


その姿を見送りながら沙都子はそう言って、矢部さんと子供達と、そして自分に言い聞かせたのだ。



「沙都子さんどうしたの?」


前田は嫁から事情を聞いて呆然とした。


そしてその夜話しを聞いた息子から、孫娘の前で野良猫を虐めるような真似をしない事を、約束させられた。

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