第4話
パッと店内の照明が明るくなった。
「一休みして珈琲を飲みませんか?」
冨樫はその場に合わない程に、明る調子で言った。
「温かい珈琲と美味しいケーキで、気分を変えてください」
「まさか冨樫さんの余興っすか?」
飯盛君がこの場を盛り上げる為に、冨樫が仕組んだ事と突っ込みを入れた。
「いいえ……でも、面白い趣向だったでしょう?」
そう言われて、店内の者達は〝なーんだ〟と言わんばかりに、気分を明るくして再び騒ついた。
「もう……いい加減にしてくださいよ」
「本当にちびりそうだったんだから……」
おばさんが冗談を言ったので、店内に笑いが起こり、雰囲気はガラリと変わった。
そして飯盛君と森君、愛美と虎太郎が手伝って、珈琲タイムとなった。
「まじビビった……」
飯盛君が恨めしげに冨樫に言った。
「倫子ちゃんなんて、泣きが入りましたから……」
「まじで……まじで……怖かったんだから……」
倫子ちゃんは涙目になりながらも、美味しいケーキはしっかりと頬張りながら訴えた。
「飯盛君に送らせますから……」
冨樫はいつに無く、朗らかに笑いながら言った。
「あの……話してた方は何処に行っちゃったんですか?」
愛美は店内を見回しながら聞いた。
「私はここです」
小太りの男性はカウンターの奥に姿を現した。
「いや〜誰も言ってくれないので、いつ出ようかと困ってました……」
常連さん達は歓声をあげ、おばさん達はカウンターの中に入り込んだ。
「どうやって隠れたの?」
「女性が出て行く時、皆さんの視線が釘付けになりましたからね。その間に……」
「えー?太っている割には、動きはいいんだ?」
「佐藤さん……」
西さんは、正直な佐藤さんを制止するように名前を呼んだ。
「じゃあ、あの人もグルだったの?」
佐藤さんが関心する。
「今年は懲りすぎっしょ」
なんだか冷めている森君が呆れる。
と同時に笑いと拍手が起こり、和やかなティータイムは盛り上がりを見せ、住宅街とはいえ森林が続く闇夜の中、煌々と明るい店内から人々の楽しげな笑い声が漏れた。
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