第58話 地獄のケータリング7

「はい、おにーさんの番ですよん」


 とニヒヒとはにかむ、ねね。

 ねねというのは凜さんのパソコン教室で出会った笑顔眩しいリア充中学生だ。

 いつも俺にエロいちょっかいをだして、からかってくる困ったちゃんである。


 こほんっ、話を戻してついに俺の番。

 罰ゲームは怖いがなんやかんやでゲームを楽しむ俺がいる。

 こうやってわちゃわちゃして遊ぶの実は初めてなんだけど悪くないね。


「よし、いくか」


 気合を入れて、お寿司を選ぼうとした矢先、誉ちゃんが。


「恭介たん、ちょっと待って。あたしのプログラムを使わない?」


 誉ちゃんからの提案。

 しかし俺の番なのに、それはゲーム的にNGなんじゃないかな。

 すると凜さんが、


「ちょっと待って。それはずるいわ。認めないわよ」


 そうだよね。

 俺の番だし、自分で選ばなければ。


「ねねもずるいとおもいまーす」


 わかってるって。

 誉ちゃんの提案はありがたいけどね。

 すると、


 むぎゅっ。

 何が起こったのか一瞬わからなかったが。

 腕に至極柔らかな感触が……


「いいじゃない。使用料はそうね。あたしのお願いごとを聞いてくれればいいわ」


 はー誉ちゃん何いってるの?

 お願いごと聞いたら罰ゲーム受けてるのと同じじゃないか。

 というかなんで俺の腕に抱きついてるわけ?


「一色さん、何やってるのかしら」


「だってせっかくあたしが恭介たんの役に立とうとおもったのに、邪魔するからよ」


「当たり前でしょ。恭ちゃんの番なんだから選ばせてあげなさいよ」


「へー。恭介たんがワサビ寿司に当たって苦しんでもいいのね」


「そんなこと言ってないでしょ。早く離れてなさいっ。恭ちゃんもでれっとしないっ」


 誉ちゃんの提案は有難いがとばっちりで、凜さんに怒られてしまったじゃないか。

 ぎゅっとしてくれたのは嬉しかったけど、これで+-ゼロである。

 すると、


「ねねも混ぜてくださーい」


 今度は 背中に柔らかな感覚が!?


「おにーさん、もてもてですね」


 ねねはそう言って、暖かい吐息を首元にかけてくる。

 思わず、体がゾクッとしてしまった。

 自分が何やってるのかわかってるのかこの娘は?

 もう、これじゃあゲームどころではない。

 現状を整理すると、俺の右腕に誉ちゃん、背中にねねが抱き着いている構図だ。

 取り急ぎ二人に離れてもらおう。


「誉ちゃん、ねね早く俺から離れてもらえるかな? じゃないと……」


「一色さん、ねねさん。だからさっきからずるいって言ってるでしょ? 恭ちゃんもわかってるわね?」


 ほら凛さんに怒られてしまったじゃないか。

 んん? ずるいって誉ちゃんのプログラムを俺が使うのがだよね?

 わかってるねって、どういうこと?

 疑問符だらけである。

 その後、凜さんは立ち上がり、俺の左までくる。

 俺は何をされるのかわからず、ぎゅっと目を瞑っていると、


「もう、恭ちゃんのばか。これでお相子ね」


 なんと凛さんは空いている俺の左腕にぎゅっと抱き着いてきたのである。

 凛さんの胸の柔らかな感触が腕から伝わってくる。

 す、すごい弾力。

 まさか女子さんに一度に抱きつかれることがあるなんて。

 せっかくなので、胸の弾力を比べてみると一位圧倒的に凛さん、二位ねね、三位誉ちゃんというところだ。


「おい、斎藤っ。お前何やってるんだ」


 隣席にいた乱銅さんが声をかけてくる。

 そうだった乱銅さんが隣にいたんだ。

 乱銅さんを見るとアイマスクを外していなく、この状況を見られていたら即死確定だった。

 胸の感触を楽しんでいる場合ではなかったな。

 俺はほっと胸を撫で下ろす。


「俺は何もというか、なんでもないです」


 この状況を乱銅さんに伝えて得はひとつもない。

 というか、俺は乱銅さんの秘密を守らなければならない。

 しっかりしなくては……


「これからお寿司をところです」


「そうか、だったら早くとれ」


「誉ちゃん、提案嬉しいけど自分で選ぶね」


「恭介たんがそうしたいならいいわよ。でもこれじゃあお寿司とれないわよね?」


 ある意味両腕ホールドされてるので、確かにお寿司をとる術はない。


「じゃあ、こうしましょう。恭介君が選んだお寿司を私がとって食べさてあげるわ」


「どさくさに紛れて何を言ってるの? この泥棒猫」


「お二人ともねねのこと忘れてないですか? ねねがおにーさんに”あーん”してあげるんですっ」


 こうなってしまっては埒が明かない。

 非常に気が進まなかったが、俺は強硬手段に出ることにした。

 前のめりになって手前にあるお寿司を直接頬張ったのである。

 結果、わさびが入ってなくゲーム的にクリアしたのだが……その後、凛さんから行儀が悪いと怒られたのは秘密である。

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