第57話 地獄のケータリング6

 ついに始まった第一回デスロシアンルーレット。

 目の前にはマグロ握り10カン、この中に1カン大量わさび寿司が含まれている。

 順番はねね、凜さん、誉ちゃん、俺、そして乱銅さんに決まった。

 そしてゲームが始まった。


「うーん。どれにしようかな」


 と言いながら、ねねはお寿司をさらーっと眺める。

 この娘、言いだしっぺでいきなりワサビ寿司に当たるような神引きしないよね?

 俺は嬉しいが、ゲーム的には興ざめである。


「これにしますね」


 ねねは真ん中に位置するお寿司をとって軽快に口へ運ぶ。


「うっ……」


 案の定、苦しみ出すねね。

 まさか本当にいきなりわさび寿司を引いてしまったのか!?

 それにしては苦しそうである。

 みかねて凜さんが、


「大変、ねねさん。お茶飲んで」


「こほっ、凜おねーさんありがとうございます」


 ねねは凛さんに手渡されたお茶をすすり、ぽんぽん背中を叩かれる。


「ねねちゃん大丈夫か?」


 目隠しにより乱銅さんの表情はわからないが至極心配しているようだ。

 それから少し経って、落ち着いたねねは、


「ふぅー、みなさん心配おかけしました。急いで食べたせいで喉に詰まらせてしまいました」


 喉につまらせたのか何事もなくてよかった。

 それにしても凛さんナイスフォローだったな。

 そういえば緊急ミッションである”乱銅さんの秘密を守れ”だが、今のところ大丈夫そうである。

 といいつつも、俺自身が乱銅さんの秘密をわかってないんだけどね。

 ゲームは再開して、


「私はワサビ寿司じゃなかったです。それじゃあ次は凛おねーさんですね」


「うん、それじゃあ選ぶわね」


 凜さんが選んでいる傍ら、誉ちゃんが、


「凛、わさび寿司遠慮なくお食べなさい。そしたらあたしと凛の家を交換するようお願いしてあげる」


 おいおい、いきなりぶっ飛んだことを言い出す誉ちゃん。

 というか罰ゲームってそこまで強制力あるの?

 だとしたら怖すぎる。


「そんなの聞くわけないでしょ?」


「何が不満なの? タワマンの最上階よ」


「そういう問題じゃないの」


「凛、ずるいっ。あたしだって恭介たんの隣に住みたいもの」


「私だって譲らわないわよ」


 ばちばちと火花を散らす誉ちゃんと凛さん。

 なぜか二人は違う次元で戦い始めた。


「斎藤よ、なんだこの空気は?」


「いえ、いつものことなので気にしないでください」


「うむ」


 わちゃわちゃいろいろあったが、凜さんの番だ。


「お寿司の見た目からは判別できそうにないわよね。ここは思いきりが大事よ」


 そう言って凛さんは手元にあるお寿司をとって口に運んだ。


「うん、おいしい。というわけでセーフね」


 至極あっさり終わる凜さん。

 とりあえずワサビ寿司に当たらなくてよかった。

 そんなことになったら誉ちゃんとまた一騒動ありそうだしな。

 三番手の誉ちゃん。


「あたしの番ね」


 そう言って誉ちゃんはノートパソコンをカタカタとタインピングし始める。

 何をしてるのか問うと、わさび寿司の場所を当てるAIを即席でつくっているようだ。

「乱銅の性格やら」ぶつぶつ呟きながらタイプしている。

 そしてプログラムはあっという間に組み立てられた。

 どういう原理かわからんが、これでワサビ寿司の場所がわかるという、さすが誉ちゃん、天才だ。


「誉ちゃん、プログラムってワサビ寿司の場所を当てることもできるんですね」


「そうよ、単純な確率の計算だけどね」


「よくわかりませんが、さすが誉ちゃんです。ねねに今度教えてください」


「そういっても、ワサビ寿司をひく可能性もあるのよね」


 と、凜さん。


「はー、あたしのプログラムに難癖つけようっていうの?」


「確率なんだから、ワサビ寿司を引く可能性もゼロじゃないって言ってるだけ」


 再度睨み合って、バチバチする二人。

 本当相性最悪だな。


「いいわ。見てなさい」


 誉ちゃんはそう言って、AIが選んだお寿司をとる。


「ふーん。これね」


 そしてお寿司を頬張った。


「おいしいお寿司だったわ。というわけでセーフね」


 誉ちゃんもワサビ寿司にあたらず、残り11カン。

 だんだんとワサビ寿司にあたる確率が上がってくる。

 そしてついに俺の番となったのだが……

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