第56話 地獄のケータリング5

「それで罰ゲームってなんだよ?」


「もうおにーさんったら、焦らないで下さい。今から説明しますね」


「じゃじゃーん」と言って取り出したのは五面ダイス。

 ダイスの面には俺や凜さん誉ちゃんの名前が書いてあった


「ここにあるお寿司の中のわさび入りを食べた人が、このダイスをふって出した目の人のお願いを一つ叶えるんです」


 凜さんは目をきらっと輝かせて、


「ふーん、一つお願いを聞くね。悪くないわね」


 おいおい凜さん。

 さっきまで引き気味だったのに、なぜか参加意欲が沸いてしまっている。

 さわびを食べたあげくに罰ゲームがおまけつきのマゾゲーなんだぞ。

 一つお願いってあんなことやこんなことができるわけじゃないだろう?


「お願いってなんでもありってわけじゃないんだろう?」


 俺がそう発言すると女子たちが身構える。

 そんな中ねねが恐る恐る、


「お、おにーさん、ねね達に何をお願いしよう!? まさかっHなお願いじゃ……」


「恭介たん。そうなの? それだったら罰ゲームでなくても……」


「違う、違う、どちらかというと自分の身の心配をだな」


「わかってますって。ここに集まっているのは良心的な方々ですから。おにーさんが考えているようなHなことは起こりませんよ」


 この娘全然わかってないじゃないか。

 何度も言うが俺は健全な男子高校生なんだ。

 節度あるお願いをするに決まってるだろう。

 続いて誉ちゃんが、


「あたしはそんなリスクがわからないようなゲームやりたくない」


 お、いいぞ誉ちゃん!

 可能であれば俺もゲームには参加したくない。


「だけど、恭介たんがやるなら、やってもいいわ」


 突然の決定権をぶん投げる誉ちゃん。

 そんな重責を俺に委ねるなんて。

 そんなことしたら……


「おにーさん。もちろんやりますよね?」


 予想通りのねね。

 俺が「ハイリスクノーリターンだしな……」と答えると、


「そんなことないですよ。こういうゲームをやって親睦を深めていくものですよん」


 そうなのか。

 大量のワサビ寿司を食べたうえに罰ゲームがあるなんて、ある意味究極のマゾゲーだぞ。

 ぼっちの俺にはわからないが、みんなこうやって親睦を深めているのか。

 リア充のねねが言うのだから間違いないか。


「恭ちゃん。そんな難しい顔しないの! せっかくだから楽しもうよ」


 皆には少ない報酬で俺の仕事を手伝ってもらっていることだし、ここで和をみだすこともないか。


「わかった。俺もやるよ」


 俺が承諾すると、満面の笑みで喜ぶねね。

 そんなにこのデスゲームがしたかったんだな。

 しかし俺たち四人しかいないのにどうして五面ダイスなんだ?

 俺が疑問を問うと。


「ふっふっふっふー。もう一人いるじゃないですかー。ねーつよぽん!」


「えっ」


 激しく動揺する乱銅さん。


「えっじゃないですよー。つよぽんいなかったらこのゲーム成立しないですから」


「俺は仕事で来てるし、それにみんな俺が入るの嫌だろう?」


 と、俺のほうを見ながら言う乱銅さん。

 いや、こっちをみられても、反応に困るし。


「そう言わずに遊びましょうよー」


「お前らだけでやってくれ」


「つよぽん、ねねと遊ぶのいやですか?」


 上目遣いでのお願い攻撃。

 俺はこれで何回撃破されたことか……

 豪鬼先輩こと乱銅さんであれば、きっとはねのけてくれると思っていたが、


「くそ、一回だけだからな」


 ん? 乱銅さん。

 気のせいか、乱銅さんの顔が赤くみえる。


「はいっ」


 と、ねねがぱぁーっと表情を輝かせる。

 と、同時に表情を曇らせた乱銅さんが、


「だが、俺はどれにワサビが入っているか知っているぞ」


 それを聞いたねねは、鞄に手を入れて何かを探し出した。


「ふっふっふっふー。だから、つよぽんはこれをつけるんです」


 乱銅さんが手渡されたのはアイマスクで、目のところに非常に可愛い目がついている。

 確かにこれをつければ目隠しになるが。

 乱銅さんはそれをみて、無表情でアイマスクをつけて俺を見る。


「くすっ」、思わず笑ってしまった。

 だっていつもの太々しい顔はなく、なんともチャーミングな表情でギャップがありすぎる。

 皆も想像してごらん、睨めっこななら百戦錬磨だから。

 女子達を見ると、俺と同様に笑いを堪えているようだ。


「おい、斉藤。似合っているか?」


 そんな質問されても困る。

 これは似合っているといっていいのか?

 声に発すると笑ってしまいそうで、中々声が出せない。

 そんな中、涙目を拭いながらねねが


「全然変じゃないですよ。つよぽん」


「ねねさんの言うとおり。よく似合ってるわ」


「悪くないわね。良くもないけど」


 乱銅さんは見えてないからわからないけど。

 女子達めっちゃ笑ってるからね。


「よくわからんが、変ではないということだな」


 ここは俺も便乗しておくか、


「乱銅さん、似合ってます」


 俺がそう言うと、


「お前に言われると、腹が煮えくりかえるな」


 女子達と違って俺に厳しい乱銅さん。

 便乗して発言をしたら火傷してしまった。

 一通りアイマスクの件が終わると、ついにデスゲームが始まった。


「それじゃあ、第一回デスロシアンルーレットはじまりはじまりー」


※この話から”ねね”の呼称を変えます。

この変更は過去話に遡って修正予定です。

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