第55話 地獄のケータリング4

 乱銅さんの質問に俺は硬直していた。

 なんて答えればいい?

 女の子に囲まれているこの状況で本当のことを言って信じてもらえるのだろうか。

 俺が返答に困っていると乱銅さんが催促してくる。


「おい、斎藤どうなんだ?」


 怖い顔で睨まないでくれ。

 そんな顔で睨まれると思考がどんどん鈍ってしまう。


「あーん。おまえ、やましいことがあるから答えられないんじゃないのか?」


 あー全く話がまとまわらない。

 俺がさらに困惑し返答に困っていると。


「もー。遅いんだから。恭介たん何してるの?」


 後ろから声が聞こえてくる。

 その声は誉ちゃんだった。


「いや、ちょっと。俺たちの集まりのことをね」


 俺がそう言うと、誉ちゃんが何か悟ったかのように、コクント頷き、


「らーんーどーくーん。あなたここに一体何をしにきたのかしら。恭介たんは町内会の人の為に私たちを集めて働いているだけよ」


 誉ちゃんはすごい高圧的な口調で言った。

 鬼退治をする桃太郎のごとく、乱銅さんと対等、下手すると乱銅さんを食ってしまいそうな勢いで、俺なら泣いてしまうだろう。

 乱銅さんは無言のまま、それを肯定受け取った誉ちゃんは、


「わかったなら。あたしのおかわりを握って頂戴。早くしないと部費を半減するわよ」


「そ、それはよしてくれ。部員に迷惑がかかってしまう。斎藤、おまえにもいろいろ事情があるということだな。ここは生徒会長に免じて目を瞑っといてやる。しかし詩愛ちゃんを悲しませたらわかってるな」


 その物言いいに俺はごくりと唾をのみこむ。

 しかし誉ちゃんのおかげで助かった。

 強烈な援護射撃であった。

 敵にすると怖いが仲間にするとこんなにも頼りになる存在だったとは。


 俺は自席に戻り、乱銅さんに握ってもらった新鮮なマグロ握りを食べる。

 感想は至極シンプルでぷりぷりとした触感で、口の中でとろける。

 この前ねねの家で食べたお寿司もおいしかったが、握りたてがこんなにおいしいとは。

 あれほど怖かった乱銅さんの顔が仏に見えてくるくらいである。

 その後マグロ握りを楽しんでいると、スマホにメッセージが届く。

 メッセージを確認してみると、


『恭介君、女子会を楽しんでいるかな?』


 ミスターXからだった。

 こいついつも忙しい時メッセージをしてきやがる。

 俺はまわりにきずかれないようにメッセージを返す。


『おまえ。なんで知ってるんだよ? 女子会じゃないけどさ』


『それは秘密です』


 お決まりの文句である。

 こいつ俺の家に盗聴器でも仕込んでいるのだろうか?

 続けてミスターX、


『と、冗談はここまでにして。君に緊急ミッションを言い渡す』


 緊急ミッション!? 

 この状況で一体俺に何をさせようとしているんだ。

 続けてミスターXから緊急ミッションが送られたきた。


『乱銅君の秘密を守れ』


 だった。

 なんか聞きなれたフレーズが送られてきた。

 これは如月さんのときと同じだ。

 乱銅さんの秘密とは一体……

 知りたくもないがミッションであるならば断わるわけにはいかない。


『秘密ってなんだよ』


 俺がそう返すと、


『それは秘密です。だがすぐにわかる。以上』


 いつものお決まり文句である。

 その後ミスターXから追加の情報を得ることはできなかった。

 それからしばらく何も起こらず、俺はお寿司を堪能していたのだが、乱銅さんが突如テーブルにお寿司の盛り合わせをもってきた。

 こんなにいっぱい誰が頼んだんだ?

 まわりを見渡すと凜さん、誉ちゃんもきょとんとしている。

 するとねねが待ってましたといわんばかりに、ぱんっと手を叩き、


「はいはーい。ここでゲームをしたいとおもいます」


「ゲームって? このお寿司と何か関係があるのか」


 俺がそう言うと、ねねはにかっとはにかみ、


「おにーさん。正解です。ここにある15個のお寿司をつかって、デスロシアンルーレットをしまーす」


「デスロシアンルーレットってずいぶんと物騒なもの言いね」


 凜さんが少しひきぎみに言う。


「一つだけ大量のわさびがはいっているので、それを食べた人が罰ゲームを受けるんです」


 大量のわさびって、一昔前のテレビで流行ってたよな。

 まさこリアルでやる機会が訪れるなんて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る