第52話 地獄のケータリング1
お寿司は今から30分後に届くらしい。
ねねに注文を委ねてしまった為、どこに頼んだのかわからない。
そこが今俺の中の最大の問題だ。
そう、ねねがこの前頼んだお店は乱銅寿司。ねねは乱銅寿司のお得意様らしい。だから今回も魔人様のお店に頼んだのではないかと心配しているのである。
俺の家にねねがいる、付け加えて他に女の子もいる。そして俺の家がばれる。
この方程式によって俺の死は確定するのである。
幸運に凜さんと誉ちゃんが飲み物を買いに出かけているので、一つの条件はクリアされているが……今の内に注文先を確認しておきたい。
「ねね」
「なんですかー?」
「ひとつ聞きたいことがあるのだが……」
「駄目です」
この娘、俺が困っているときに質問を拒否するなんて、
俺はすぐに「どうして」と返す。
「どうせ、ねねにエッチな質問をしようとしてるんですよね?」
「おまえっ、なんでいきなり俺がエッチな質問をしなきゃならんのだ」
「今日はお姉様方がいるから男の子の欲望を抑えているのかとおもってました!」
「ねねの中の俺って一体……どこで道を踏み外したのか……」
「あはは、おにーさんおっかしー」
けらけらと笑うねね。
可愛い顔して笑っているが、俺には悪魔にしか見えていないからな。
俺はすぐに反撃にでる。
「おっかしーっておまえなー。で、どうしてエッチな質問を俺がするとおもったんだ?」
「それはですね。さきほどからあたしのこと舐め回すようにじろじろみていたから、男の子の欲望を抑えきれなくなったのかなーと思いまして」
たしかに乱銅寿司のことが気になって、原因の張本人であるねねのことを見ていたかもしれないな。
なんか言い訳するほど、怪しくなってくるな。
俺は注文先を聞きたいだけなのだが。
というか客観的にみると俺は知らず知らずのうちに女の子をエッチな目でみているのだろうか。
からかい上手のねねさんだけに全てを鵜呑みにするわけにはいかないが、気を付けよう。
俺の困った顔もみて、ねねは、
「嘘、嘘。うそですよー。もーおにーさんは本当におにーさんですねっ」
「本当におにーさんって、なんだよ。全くおまってやつは」
「あはは、こほん、それで質問ってなんでしたっけ?」
笑い涙目をこすりながらねねがいう。
どれだけ俺をもてあそべば気がすむのだ。
だがしかし、ねねのおかげで、乱銅パニックがおさまっているのは事実だ。
俺が緊張しているのをみて、ほぐしてくれたのだろうか。
仕切り直しねねに質問する。
「お寿司屋さんってどこに注文したんだ?」
「あーおにーさんねねのこと信用してないんですか? ひどいです」
「違うよ」
「じゃあ、どうしてですか?」
じーっと俺のことを見つめるねね。
味うんぬんというよりかは、俺の命に係わることなんだよね。
回答によって今すぐ俺はここから離脱しないといけない。
なんとか、ごまかしつつ聞き出さなくては
「ほらっ、前にねねの家で食べたお寿司おいしかったからさー。同じお店なのかなっておもって」
ねねは唇に人差し指をあて、
「前回ってあーつよぽんのお店ですね。うー、あー、いや、ちがいますよん」
「あっそうなんだ。なんか答えがでるまでに時間がかかったから、すこし不安になったが、大丈夫そうだな」
「何が大丈夫なんですか?」
「いや、なんでもない。こっちのことだから」
「そんなに気になっているのでしたら、お店変更しましょうか?」
「いやいや、いいの余計な事しないで、じゃなかった心苦しいけど、今回頼んだお店もねねのお勧めなんだろう?」
「そうですけど」
「なら、そこにしよう。乱銅寿司は前回堪能したしさ。別のお店も食べてみたいからさ」
「変なおにーさんですね」
ねねは頭に疑問符を浮かべるが、俺はほっと胸をなでおろしていた。
よかった。本当によかった。乱銅さんのお店でなくて。
せっかく違う店なのに、乱銅寿司にされたら本末転倒である。
これでようやく俺も安心して、お寿司にありつけることができる。
緊張がほぐれ、待つこと数十分。
ぴんぽーん
インターホンがなる。
俺は軽快で玄関へ向かい、ドアを開けると、
「乱銅寿司です」
俺の目の前に立っていたのは仏頂面した魔人様だった。
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