第47話 羞恥プレイ
「如月さん?」
如月さんをみると穏やかな雰囲気は一変し、ぴりっとした空気を醸し出していた。
この変化はトランスした時の状態に似ている。
「久しぶり、恭介」
そう言って、彼女は俺を見る、声色は艶やかで、その瞳は吸い込まれそうになるほど澄んでいた。
すっと俺の頬に手をあて、如月さんは、
「恭介、もう大丈夫。後は私に任せて。後で楽しいことしましょう」
そう言って、彼女は誉ちゃんと対峙した。
楽しいことって一体!? ダメだ、少しわくわくしている自分がいるのだが。
「な、なんなのよ。あなた、さっきとまるで態度が違うじゃない」
誉ちゃんはトランスした如月さんを見て、至極同様しているようだ。
それはそうだろう、如月さんの変化は容姿こそ変わらないものの、中身が別人と入れ替わったようなものだ。
なぜトランスしたかわからないが、ミスターXに如月さんの秘密を知られるなと言われていたっけ……
俺の心配をよそに如月さんは誉ちゃんにむかって、
「別にそれがどうしたっていうの。そんなこと重要じゃないわ。私は詩愛と恭介の邪魔をするあなたを排除しにきただけだから」
詩愛?
まるで自分が第三者のように言う物言いに違和感を感じたのだが、そんなことを考えている場合ではないか。
氷のように冷たい物言いに誉ちゃんは少し後ずさりする。
「ふ、ふん、あなたにとって私は悪者で邪魔でしょうね。あっ」
誉ちゃんは何か気づいたかのように、持っていたポシェットからスマホを取り出して、操作をし始める。
それからすぐに誉ちゃんは、
「わかった。そうだったのね」
一体何がわかったというのか……
まさか如月さんの秘密に気づいたのか?
「何がわかったっていうの? 私はあなたに一秒でもはやく消えてほしいのだけれど」
「ふーん。信じられないけど、今が本当のあなたってわけね。そうやって恭介たんをたぶらかして……やっぱりあなたを恭介たんの近くにおいておけないわ」
「そんなことさせない。あなたの入る隙間なんてないんだから」
「たいした自信ね」
誉ちゃんが不敵な笑みを浮かべる。
その時、俺のスマホが振動し、
『恭介君、大事なことだからよく聞いてくれ』
と、ミスターXからのメッセージがアプリを通して読み取られる。
こういう事態に備えて、メッセージアプリを改良し、小型のイヤホンを耳につけていた。
付け加えて言うと、相手のメッセージによって、自作AIによって自動返信も可能にしてくれる優れものだ。
『生徒会長は何か気づいたようだ。これ以上、今の詩愛にストレスを与えたくない。早く二人を遠ざけるんだ!』
一体何が起こっているかわからず困惑する俺。
しかし、ミスターXが如月さんに関して嘘をいったことはない。
とすれば、どうにかして、二人を遠ざけなくては。
俺がミスターXとやりとりをしている間も、如月さんと誉ちゃんの言い争いは続いていた。
一つ変化があるとすれば、如月さんの表情が曇ってきていることだ。
俺は如月さんの手をとり、その場を離れようとした。
「恭介、一体何を!? まだこの女との話は終わってないわ」
「如月さん、いいから俺の言うことをきいてくれ」
「ま、まさか恭介知ってるの?」
俺は如月さんが何のことを言っているのか、この時わからなかったが、
彼女を見ると、とても悲しげな顔をしていた。
そして顔色がどんどん悪くなっていく。
俺はすごく嫌な予感がし無我夢中で行動に起こした。
「恭介、一体何を?」
「ごめん、如月さん」
「こ、こんな、人目のつくところで、というか目の前に生徒会長がいるのに。なんの羞恥プレイなんだっ」
「こ、これは仕方がないんだ」
「それにどこさわってるの。このおバカ者ー」
そう言って、如月さんは顔を真っ赤にして意識を失った。
「恭介たん、あたしの目の前でなんてことを!? 他の女に後ろから抱き着くなんて」
誉ちゃん、俺だってこんなことしたくなかったさ。
だけど、誉ちゃんから遠ざける為には、トランスした如月さんにエッチなショックを与えて気を失わすことしか方法がなかった。少し余計なことしちゃったけどね。
「恭ちゃん? そんなところで何やってるの?」
その声の方に目をむけると、そこには冷ややかな目で俺を見る凛さんが立っていた。
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