第44話 内部分裂の予兆(その2)

「ちょっと、どういうこと?

 私は調子にのってないし、運命の赤い糸ってどういうことなのかしら?」


 凛さんが俺に問いかけてくる。


「いや、俺に聞かれてもさっぱり」


 すると誉ちゃんが、


「言葉どおりの意味なんだけど」


「ふーん。だったら私はずっと前から恭ちゃんと一緒にいるんだから、赤い糸なんて関係ない。一色さんの入る隙間なんてないから」


「一緒にいる時間こそ関係ない。こんなに隙間だらけじゃないか! 凛が何もいっても無駄。あたしと恭介たんはもっと高い次元でつながっているもの」


「二人とも喧嘩はやめようね。俺には如月さんがいるわけだし……」


「「恭ちゃん、恭介たんはだまってて」」


「はい」


「お二人とも、今日はせっかく集まったのですから、話を進めませんか?」


 ねねの仲裁のおかけげ、一旦二人は言い争いをやめて、話の続きをすることになった。

 俺の言葉は通らないが、第三者のねねの言葉は通るらしい。

 誉ちゃんは、仕切り直し、


「あたしが今日、開発メンバに集まってもらったのは、みんなの意思、覚悟を確かめたかったからよ」


 今日の議題は事前に聞いたが教えてもらえなかった。

 どんな話をするのだろうか。

 ねねと凛さんはを見ると、誉ちゃんの言葉を静かに待っていた。


「あたしが参加したプロジェクトは今まで失敗したことがない。すなわちあたしが参加すれば絶対プロジェクトは成功するの」


「それは頼もしいですね。おにーさん!!!」


「うん」


「頼もしい? 勘違いしないで頂戴。プロジェクトを完遂するのは簡単なことじゃないのよ。全員がプロジェクトを成功させようって意識、能力ががないとプロジェクトは成功しないの。一人でも意思が違う人が混ざっていれば、破綻しかねない」


「そんな大げさな」


「甘いわよ。恭介。だからみんなに確認したかった。浮ついた気持ちで参加している人がいるなら、今すぐプロジェクトからおりなさい」


「この人いきなりはいってきて、その言い方はないわ。恭ちゃんがプロジェクトのリーダなのよ」


「そんなこと知ってるわ」


「ちょっと、まってよ。凛さん、誉ちゃん。落ち着いて。仲良くやろう! ねっ」


「恭介のその甘い考えも叩き直すから」


「それにこの開発には初心者が混ざっているようじゃない。経験がなくていきなり商用のシステムに参加させて大丈夫なの?」


 誉ちゃんの気迫に押されて、ねねが俺の後ろに隠れる。


「大丈夫だよ。俺がフォローするから」


「そんな余裕あるの? それに、この開発は仲良しクラブじゃないのよ。恭介この開発を成功させる気があるの? ないの? どちらなの?」


「あるけど、俺は皆に無理強いしたくない。一緒にすすめる仲間なんだから、仲良くやれればいいじゃない」


「そんな考えなら、あたしはプロジェクトに参加することはできない」


「そんな……」


 誉ちゃんは折り紙付きの最高のエンジニアだ。

 納品期日までに間に合わせる為には、誉ちゃんの力が必須である。


「誉さん。待ってください。あたし、プログラミング経験がなくて、自身があるのかといわれると、ないですが。皆さんにご迷惑かけないようにがんばりますから」


「ねねは覚悟できたってわけね」


「凛はどうなの?」


「私は初めから覚悟を決めて参加しているもの。一色さんが入ったからって変わらないわ」


「二人とも覚悟ができたってことね。それじゃあ、まずは全てのソースコードとデザインを徹敵的に見直しすから覚悟しておきなさい」


 最悪のスタートとなってしまったが、ねねの覚悟により、誉ちゃんの参加が確定した。

 そして今でも忘れることができない、あの事件がついに起こってしまうのだった。

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