第43話 内部分裂の予兆(その1)

 誉ちゃん対策を終えた俺達は、凛さんと誉ちゃんにお茶を出した。


 これでようやく話を進められそうだ。

 と、安堵した矢先、

 凛さんが俺に問いかけてくる。


「恭ちゃん、お茶ありがとね。

 おいしいわ。

 話は変わるけど、キッチンでねねさんと何をやっていたのかしら?」


 まさか、誉ちゃんのことを聞かれていたのか?

 いや、それはない。

 ちゃんと、二人が部屋をでていないことは確認したし、細心の注意を払った。

 きっと、俺にかまをかけているに違いない。

 俺は平然を装い、「何もしてない」と答えた。


 すると凛さんは、間髪をいれずに「それにしては遅かったわよね?」とつっこんでくる。

 確かに、遅かったのは事実だが……何を言っても言い訳になってしまいそうだ。


「どうした? 歯切れがよくないな。何か後ろめたいことがあるんじゃないか?

 裏でこそこそ何かしていたんじゃないか?」


 と、誉ちゃん。


「うしろめたいことは絶対ないです」と俺は断言する。


「ふーん。あやしーい」


 凛さん、俺のこと信用してないな。

 すると、横で聞いていたねねが、


「凛おねーさん。本当にお茶だけですよ。

 ぬけがけなんて決してしていません。

 時間がかかったのは、おにーさんが急須やお茶っぱがある場所を把握していなかったからです。

 料理関係は凛おねーさんが管理していたことなので、仕方がないと思います。

 それにおにーさんにそんな度胸あるわけないじゃないですかー」


 ねね、フォローありがとう。

 ん、でも俺、ディスられてる気がする……気のせいだよね?


「まぁ、それもそうね。それじゃあ、自己紹介から始めましょうか」


 凛さんが納得してくれたのは嬉しいけど、なんとなく腑に落ちないな、変に荒波がたつよりかましか……

 というわけ、やっと自己紹介が始まったわけだが……


 俺はプロジェクト管理者なのに、仕切ることができず、女子達にリードされる展開になっていた。


「それじゃあ、私から自己紹介するわね。

 橘凛。担当はコーダーよ。

 ちなみにデザインも兼務ね。

 恭ちゃんとは幼馴染だからよ・ろ・し・く・ね! 一色さん」


「ではでは、次はあたしです。

 あたしは可愛ねねといいます。

 担当はおにーさんの手伝いで、簡単なソース修正やテストをしています。

 不束者ですがよろしくお願いします。

 おにーさんとは生徒と先生を超えた中です♡」


「私で最後ね。

 一色誉よ。いろいろな開発に携わってきたから、大抵のものには対応できるわ。

 今回は恭介たんの希望でデータベースを担当するわ。

 幼馴染、生徒とか言ってたけど、あたしと恭介たんとは運命の赤い人でつながっているから、調子にのらないでね」


「は、はい! お三人さんありがとう。自己紹介以外のことも混ざっていたようだけど、それは一旦おいておいて、みんな仲良くやって」


 と、言いかけて、凛さんが遮ってくる。

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