第42話 内緒の話

 一刻も早くねねに誉ちゃんのことを説明しないとまずい。

 というのも、ねねは誉ちゃんの爆弾のことを知らないから、爆弾に火をつけかねない。

 俺は誉ちゃんから離れる口実を考えるのだが、中々うまい案が思い浮かばず、ふと、周りを見渡すと凛さんと誉ちゃんにお茶をだしていないことに気づいた。

 もう、これで行くしかない。

 俺はすぐに行動に移す。


「あっ、そうだ。お茶をまだだしてなかったね。気が利かなくてごめん。よ、よしそれじゃあ、ねね、手伝ってくれるかな?」


 誉ちゃんと凛さんにわざと聞こえるように言ったのだが、違和感なかったかな……

 すると凛さんが、


「あっ、それなら私がやるから。恭ちゃんは座ってて」


 想定内の凛さんの発言、気持ちは嬉しいけれど、誉ちゃんから離れる口実がなくなってしまうから、今日ばかりはお断りしよう。


「凛さん、今日はいいから座ってて、ねねが手伝ってくれるっていってたからさ」


「え、へ?」


 突然俺にふられて、あたふたするねね。

 お茶のことなんて伝えてなかったから当然の行動だ。

 しかし、ねねには気づいてもらわねば困る。

 俺は、ねねにしか聞こえない声で、


「いいから、俺に合わせろ」


 そして、ねねにアイコンタクトを送る。

 ねねは俺の意思をくみとってくれたのか、こくんと頷き、


「はーい。わかりました。喜んでお手伝いします!」


 と誉ちゃんと凛さんにむかって、言った。

 そして俺とねねはキッチンへ向かった。

 なんとか誉ちゃんから離れることができ、ほっとしたのもつかの間、


「ところでおにーさん、あたしをこんなところに呼んで何をするつもりですか?」


 と、ねねが俺に疑問符を投げかけてくる。


「いや、だからさ……」


 誉ちゃんのこと、直球で伝えたほうがいいのかどうか迷っていると、

 ねねは上半身を両手で隠すそぶりをして、


「おにーさん、駄目ですよ。二人っきりだからって。あちらにお客さんがいるんですからね♡」


「ダメって何がだよ。それにねねもお客様だろーが」


「てへっ。冗談、冗談ですよー。それで、そんな深刻な顔してどしました?」


 全く、ねねにはいつもペースを崩されるな。


「こほん、ねねに先に伝えておくべきだったんだけど、あそこに座っている幼女、じゃなくて女性はああ見えて俺より年上でしかも生徒会長なんだよ」


「またまたー、ご冗談を」


「いや、まじだから。一つお願いしたいのは容姿のことには絶対ふれないでね。本人、幼くみられることに至極敏感だからさ」


「そ、なんですね。ま、誰でも触れられたくないことはありますよね」


「そうだよね」


 俺は何回も地雷踏んで誉ちゃんに嫌な思いをさせてしまった。

 今日は初顔合わせだし、誉ちゃん、ねねに嫌な思いをさせたくないから。


「それで今日の集まりは開発メンバーの顔合わせということでしたけど、誉さんでしたっけ? おにーさんが探していた人なんですよね?」


「ああ、そうだぜ」


「そんなすごい人なんですか?」


「あああ、まじすげーんだぜ」


「おにーさん、とってもうれしそうですね」


 俺が目標、そして憧れていた人。

 名前しかしらなかったし、実際に会って驚いたけれども、俺の世代で最前線を歩んでいるエンジニアと知り合えて、しかも俺の開発を手伝ってくれるなんて本当に信じられない。

 このチャンス、俺は誉ちゃんから色々学びたいと思っている。

 俺の話を聞いて、ねねはぱぁーと笑顔になって、


「私だって、この開発でおにーさんにたくさんのこと教えてもらいましたよ。あんなことやこんなことまで……あたしの目標はおにーさんですよ! 絶対成功させましょうね!!!」


「少しおかしなことを言っていたような気もするけど、目標っていってもれるのは嬉しいよ。俺もねねの目標でいられるように頑張らないとな」


「はいっ」


 その後、俺とねねは誉ちゃんと凛さんのもとに戻った。



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