第41話 新たな火種の始まり
ピンポーン!
インターホンが鳴り、俺は玄関へ向かう。
ドアを開けると、そこには茶髪ロングの美少女が立っていた。
「おにーさん、こんにちわ」
ぱぁーっと明るい笑顔をふりまくこの女の子は可愛ねね。
ふりふりのスカートにおしゃれな上着を着ている。
女子力が高く、それはファッションに至っても、その高さはファッションが疎い俺でもわかるほどだ。
俺はねねに「どうぞ」と言って、家に招き入れる。
しかし、ねねは物珍しそうな様子で家の中を眺めていた。
「どうした、ねね?」
「いえ、男の子の家あがるの初めてなので、新鮮なんです」
意外な言葉に俺は驚く。
ねねは、社交性が高いから女の子問わず、男の子の友達も多そうだし、その手に関しては、経験豊富だと思っていたが。
まぁそんなことはどうでもいいのだが。
俺は再度家に入るよう促すのだが、
「はい、それにしてもすごく綺麗にしているんですね。一人暮らしって聞いていたので、もっとちらかっているのだと思っていました」
話を逸らし中々家に入らない。
玄関そんなに見るところないんだけど。
それに家の中が綺麗なのは、凛さんが定期的に掃除をしてくれているわけだけど……
やばい、もたもたしていると先に待っている来客に怒られそうだ。
「ねね、はやく入れって」
「そ、ですね」
ねねの歯切れが悪い。
「もしかして警戒してる?」
俺がそう言うと、ねねは顔を少し赤らめ「してませんっ」と言った。
そして、言い訳をするように、
「ただ、おにーさんは他の男の子と違うから。だから、ちょっと緊張しただけですから。もう大丈夫です。おじゃましまーす」
「他の男の子とは違う?」
「なんでも、ないから気にしないでください」
なんかはぐらされた気がするが、
俺が同世代の友達より年上ということだろうか? まぁ、それ以上追及する必要はないな。
そして俺とねねはリビング兼ダイニングに入ると、
中の様子を見て、ねねは一歩後ずさり、
「ここはお葬式会場ですかー?」
俺がねねの視線の先を見ると、凛さんと誉ちゃんがにらみ合い火花をバチバチと散らし、部屋の中を凍り付かせていた。
俺がいない間に何があったのだろうか……
と、まぁ俺、凛さん、ねね、誉ちゃんの四人が部屋に集まった理由だが――
昨日のスーパーの一件(詳細は後日談で)の後、今進めているプロジェクトに誉ちゃんが参加することになったからだ。
誉ちゃんの参加条件はプロジェクトメンバーに合うこと。そこで急遽凛さんとねねに集まってもらった。
こんな狭い空間に男子一人、女子三人、まさかこんな日が訪れるなんて思ってもいなかった。
というわけで、俺の家は女子密度が非常に高い状態となっている。
しかし、この三人個性が強いから、ちゃんと進められるか心配である。
俺の心配をよそに、ねねは、
「凛おねーさん、こんにちわ」
ねねがそう言うと、凛さんはねねに挨拶を返す。
凛さんとねねは初対面こそ最悪だったが、日を重ねるにつれて仲良くなっていた。
仲良くなった原因は不明なのだが。
ねねは続けて、誉ちゃんに向かって、
「あっ、そこの方は?」
「はっ、あんたこそ、誰よ?」
ぎろっと、誉ちゃんに睨みつけられ、ねねが俺にぎゅっと抱き着いてくる。
すかさず凛さんが、
「ねねさん、抱き着くの禁止」
「だって、この人こわいんですもん」
「怖くないって、この人が昨日話したデータベースの担当者だよ」
「えっ、そうなんですか!?」
ねねは驚愕した表情で誉ちゃんを見つめた。
まぁそうだよね。
誉ちゃんのファーストインプレッションは衝撃的だったしな。
例のタブーさえ言わなければ、問題ないよね?
と、思った矢先、
「誉さんでしたっけ? どう見ても、あたしより年……」
とねねが言いかけて、俺はとっさにねねの口をふさいだ。
ねねは急に口をふさがれて、もごもごしている。
誉ちゃんを見ると、何ばかなことしてるのって顔で俺とねねを見ていた。
よかった、タブーは回避できたようである。
しかし、この先ちゃんと話合はできるのだろうか……
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