第30話 生徒会長あらわる(改)

 生徒会室に辿り着いた俺は、ごくっと唾を飲み込み、ドアをノックする。

すると、生徒会室から「どうぞ」と声が聞こえてきた。

 俺は緊張する面持ちの中、ドアを開ける。

 そこには学校と思えないほど豪華な内装で、きらびやかな部屋があった。

 室内には一人の女の子がいて、にやりと笑い俺に話しかけてくる。


「ふふふ。待っていたわよ。斎藤恭介」


「こ、子供?」


 思わず口にしてしまったが、これが俺の第一印象。

 勝手な思い込みだが、生徒会長というのは『魔法科高校の〇等生の七草真由さん』のようにもっと大人びていて、清楚なイメージを持っていたのが……彼女はというと俺のイメージとはかけ離れ、非常に小柄で華奢だった。

 具体的に言えば、ねねよりも幼くみえ、下手すれば小学生にも見える。

 しかし、初対面の相手に子供と言ってしまったのはまずかったかな……

 俺は彼女にフォローを入れようと、


「あ、あの先ほど子供と……」


 と言いかけて、生徒会長は俺の言葉を遮った。


「全然気にしてないからっ! ふんっ」


 否定的な言葉と裏腹に、完全に怒っているようにみえる。


「本当に怒っていないのですか?」


「あたりまえでしょ。子供じゃあるまいし」


 よかった怒っていないようだ。見た目は子供だけど、中身は大人なんだな。

 まるで名探偵コ〇ンだ。

 さすが生徒会長は大人だな。安心した俺は話を進めようと、


「子供と言ったくらいじゃ怒りませんよね。さすが生徒会長ですね。人の上に立つお方なことはある。それじゃあ、さっそくなので……」


「また……言った……」


「へ? 子供って言ったのやっぱり怒ってますか?」


「うるさい、うるさい、うるさい」


 生徒会長はシャ◯のように怒りを露にし、表情を険しくする。


「性懲りもなく……これは確信犯だわ。あ、あたしは子供じゃないし。たしかに周りからは幼く見えるねとか。道を歩いている時におまわりさんからお嬢ちゃん迷子? とか言わることがあるけれど。多少は幼くみえるのは自覚しているのよ……それにしたって初対面なのに子供って! あんたより年上なのよ。むかつく、むかつく、むかつく……」


 生徒会長はまるで俺に呪いをかけるかのように囁き続ける。

 フォローしたつもりがさらに怒らせる結果となってしまった。

 俺の不手際とはいえ、これはかなりまずいのではないだろうか……


「あ、あの……さっき俺が言ったことなんですが……」


「だからあたしのこと子供って思ってるんでしょ?」


「悪い意味ではないです。俺より年上なのに若くみえるって……ポジティブに受け取ってもらえると……」


 生徒会長は俺の言葉を遮るかのようにドンっと机を叩き、立ち上がった。

 そしてぷくっと頬を膨らませ、俺の目の前まで歩み寄ると、


「おまえ話をごまかすんじゃない! 子供って言ったのは取り消せないんだからなっ」


 生徒会長は右手の人差し指を床に向け、数回上下させ、


「か・が・みなさいっ」


「へ?」


 唐突な物言いに俺は疑問符を浮かべる。

 しかし生徒会長は間髪いれず、


「かがめって言ってるのっ」


 先ほどより強めの口調で俺に再度命令する。


「はいっ」


 俺は生徒会長の勢いに圧倒され、思わずかがんでしまう。

 これから一体何が始まるのだろうか……まさか顔面にビンタとか?

 こんなに怒っているのだからありえるか……俺は決してマゾではないけれど、許してもらえるのであれば一発くらい仕方ないか……


「あんたはあたしに屈辱的な言葉を浴びせたのよ。どう責任とってくれるの?」


「俺にできることならなんでもするので許して下さい」


「じゃあ、あたしと結婚して」


「えっ、結婚っ!?」


 生徒会長の突然のプロポーズに、顔が沸騰する俺。

 それを見て、生徒会長も顔を赤くし、


「ばかっ、何顔赤くしてるのよ。それくらい傷ついたって言ってるのっ、男なら責任とりなさいよ」


「子供って言っただけじゃないですか」


「また言ったー。ばかばか。恭介のばかー」


 そう言うと生徒会長は涙ぐんでしまう。

 しまった、子供はタブーだった。


「生徒会長、本当にごめんなさい」


「くぅううう……もう許さないんだから。目をつぶりなさい」


「い、一体何をする気ですか?」


「いいから早くつぶれっ」


「はいっ」


 本当に高圧的な女の子である。これまでに出会った誰よりも怖い。

 それにしてもなぜ目はつぶらなきゃならないんだ?

 それから少し沈黙があり、顔に吐息らしきものがあたるのを感じる。

 この感覚は体育倉庫でトランスした如月さんにされたのと似ている気がするのだが……

 再び耳元に吐息がかかり……

 俺は絶対絶命のピンチを迎えるのだった。

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