第2話 美少女高校生の転入(改)
次の日 ――
俺は朝のホームルーム前、大きなあくびをし、目をこする。
理由は簡単「如月詩愛」という女の子が気になって、気になって、どんな女の子なのか妄想していたら、脳が活性化してしまい眠れなくなってしまったのだ。
結局一睡もできず……
それから数分後、チャイムが鳴り、ガラガラガラと担任の教師が教室に入ってきて、教卓に立った。
そして担任はこのクラスに転入した如月詩愛のことを軽く紹介し、教室に入るよう声をかける。
期待感にざわつくクラスメイト。
俺もドキドキしていた。ついに如月詩愛の顔を拝めるのだから。
クラスメイト一同が教室のドアに注目する。
「……………………」
「あれ?」
如月詩愛が中々入ってこない。
クラス内から「どうしたのかな?」とざわつき始める。
見かねた担任は如月詩愛を呼びに廊下に出た。
だが、中々戻ってこない。
何やら、廊下から担任と女の子の話し声が聞こえてくる。
怖くないだの、仲良くできるかな? など聞こえてきた。必死に担任は説得しているようだ。
如月詩愛さんって、人見知りで、緊張屋さんなのか?
それから数分経って、担任がはいってきた。
その後を追う感じで如月詩愛も入ってくる。
まだ顔はよく見えないが、銀色の長髪でかなり華奢な体つきにみえる。
教卓で担任の隣にたつ少女は、おそるおそる顔をあげた。
その瞬間。
クラスメイト達のざわつきは一瞬で静まる。
俺もおもわずおおきなつばをごくりと飲み込んだ。
そして、如月詩愛の顔が教室中の目に入るやいなや、空気は一変。
如月詩愛は雪のような白い肌をもち、そして異次元の可愛さがあった。
俺は密かにボストロールのような女子が現れることを予想していたので、開いた口がふさがらない。
そんなわけで、男子生徒達は知性を失ったオークのように興奮する。
俺もその仲間の一人になりそうだったが、必死に理性を抑える。
ミスターXすまん。俺には会話することさえできそうにない。
俺が悲観している中、如月さんの自己紹介が始まった。
男子生徒達は相変わらずうるさく、 彼女の声はかき消されている。
担任も頑張って鎮めようとするのだが声は届かないようだ。
如月さんは今にもなきそうな表情、それをみてますます興奮する男子。
まったく最低な豚野郎達だ。
まぁ、想定外にこんな可愛い女の転入生がきたのだからテンションがあがるのはわかるが、 如月さんが自己紹介できないじゃないか……おまえら少しはおとなしくしろよ、と言えるはずもないので心の中で叫ぶ俺。
初めてみた女子になぜ俺はこんなにいらだっているのだろうか……理由はわからない。
いつもクラスではできるだけ陰に隠れて、存在を無にしている俺。
できるだけ人にかかわらないようにしている。そんな俺が一体!?
だが、この時ばかりは黙っていることができなかった。
「おまえらっ! うるせぇんだよ。如月さんが困ってんだろ! 静かにできないんだったら、異世界にでも行って、あばれてこいや。このオーク共がっ」
普段物静かな俺が怒鳴ったせいか、教室内はしん、と静まり返り、今度は俺が逆に皆に注目される形になってしまった。
針山に立っているかのように皆の視線がつきさ刺さる。
きっと、如月さんの前でかっこつけるなよ! とか、キモオタ帰れとか思われているんだろな。
それに無我夢中だったとはいえ、最後のほうはわけわからないことを口走ってしまった(反省)。
ん? 視線を感じる。
それはクラスメイト達からの冷ややかなものではなかった。
俺は恐る恐る視線の方向に振り向くと、如月さんが至極驚いた表情で俺のことを見ていた。
かっと目を見開き、口に手をあてる如月さん。
俺の顔そんなめずらしい?
まさか一目ぼれか? いやいやそんなわけない、極上の美少女が俺なんかにね……
いや、多分俺がいきなり大きな声を出したから驚かせてしまったのかもしれないな。
俺が席に座ると、担任は生徒たちに対し、自己紹介を再開した。
クラスメイト全員の視線が再度、如月さんに集まる。
如月さんは右手で自分の左胸に触れた。ぎゅ、っと制服のブラウスを掴み、
「みなさん、はじめまして、如月詩愛です」
緊張していたのか、如月さんの声は小さく、消え入りそうだった。
続けて 如月さんは、
「小学五年頃までこの街に住んでいたんですが、これまで親の都合で離れていました。ですが、こうやって戻ってこれてとても嬉しいです。皆さんよろしくお願いします」
クラスメイト達は拍手喝采、「ヒューヒュー」と黄色い声援、中には「可愛い」、「俺と付き合ってくれ」みたいな声が飛び交い、 如月さんはカッと顔を赤くする。
が、俺の抑止が効いたせいか過剰な盛り上がりはなく、自己紹介が終わった。そして担任は如月さんの座席を発表する。
は? なんて?
な、なんとなんと俺の隣。
席が隣になっただけなのに、一気に鼓動が高まり、変に意識してしまう。
そんな俺だったが彼女の自己紹介に一つに気になるところがある。
”小学五年までこのあたりに住んでいた”と言っていたが、そう考えると小学校は俺と同じってことだよね。このあたりには小学校一つしかないし、こんな可愛い子いたっけ? 絶対忘れるはずないんだけど……考えても考えてもわからないので、あとで凛さんに聞くことにするか。
その後、如月さんは席に着き、担任から日直のこと、掃除当番、お知らせ事項が伝えられ、ホームルームが終わり、担任は教室を出た。
時計を見ると8時45分、一限目まで15分くらい時間がある。
さっき俺が暴走し怒鳴った時の彼女の目が気になったけど、席がお隣さんになったんだし、話しかけやすいシチュエーションだ。
チャンスをいかして如月さんの秘密を探らないといけない。
横目でちらっと如月さんを見るが、横顔もすごく整っていて可愛い。どこから見ても可愛すぎる。やばい……鼓動がさらに早くなる。
もう一度チラっと、如月さんを見ると、彼女と目が合ってしまう。
「……………………」
俺は彼女から視線をそらし、顔を下に向ける。
やばい、俺がちらちら見ていたから視線に気づいたのかな。変な人だと思われていないかな、手にめちゃ汗をかく俺。
なんかすごい気まずくて声がかけにくい状況になってしまった。
どうしよう。
「…………」
沈黙を破ったのは如月さんだった。
「あ、あの……」
とても小さく可憐な声だ。
「さっきのことだけど……」
「自己紹介のことね」
「そ、そう」
いちいち、可愛いなぁ如月さん。
お礼とかいわれちゃうのかな俺。
「え?」
「もう、しないで」
如月さんは、真剣な顔で言った。
恩をきせるつもりでとった行動ではなかったけれど、少しお礼を期待していた為、期待と真逆の言葉に、俺は言葉が出せない。
俺のとった行動は彼女にとっては不快だったのか……
「わかった。もうしないよ。如月さんごめん。余計なことをしたね」
「いや違う……」
そう言いかけた瞬間、クラスメイト達の波がやってきた。
如月さんは何かを言いかけていたのだが、こいつらのせいで会話は終了した。
彼ら・彼女らは如月さんにあれや、これや質問攻めをしている。
俺だって聞きたいことは山ほどあるんだよ。
ほんとこんな調子で彼女の秘密が守れるのだろうか。
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