第1話 ミスターXの脅迫(改)
高校に入学して、1か月が経ったある日。
その日はとてもあたたかく、天気は快晴、リア充であれば絶好のお出かけ日和だった。
しかし俺は朝から室内にこもって、超インドア生活を送っている。
決して友達がいない訳ではない、気心知れた友人がいる。
一人だけだが――
友達は量より質、狭く深くがいいと思っていて、一生のうちに親友と呼べる友が一人できれば十分だと思う。
それに俺には友達をつくっている時間はない――俺に叶えたい夢があるからだ。
それはとても大きく、崇高で、俺の生涯を通して必ず叶えたいこと。
俺は夢を叶える為の活動を学校、仕事の合間にしているから、必然的に休日活動することになってしまう。
だからきゃぴきゃぴと青春を謳歌している高校生どもを見ても、決してうやらやましくない!
本音を言うと少しうらやましい……
だけど今は夢にむかって頑張ることが先決なのだ。
俺は壁に貼ってある一枚のポスターへ目をむける。
そこには”プログラミングコンテスト開催! 集え未来の開発者”と書かれている ―― プログラミングコンテストは某上場企業が毎年開催している高校生限定のインターハイのようなイベントだ。そのイベントは優秀な人材を発掘する目的もあり、開催していると耳にしたことがある。
参加資格者:高校生
応募方法:インターネット
選考基準:独創性、パフォーマス、メンテナンス性が秀でているもの
課題:人工知能における、インターネットからの情報収集と活用
優秀者(1名):賞金100万円、プログラマーとして専属契約
備考:プログラミング言語、データベース等は各自適切なものを選択すること。
夢の第一歩して、俺はプログラミングコンテストで必ず優秀賞を受賞しなければならない。
なぜかというと、俺は学生をしながらアルバイトでプログラマーをやっていて、学業と仕事をこなすのが精一杯なのだ
だから優勝し100万円が手に入れれば高スペックなパソコンを買ったり、技術書を買ったり、アニメのDVDを買ったり(これはいらんか)できる。
プログラミングコンテストのことを少し説明すると、コンテストは予選、本選で構成されている。
予選は要件定義、設計。本選は製造、テストと、予選、本選を通して一連の工程を作業をしていくので、これは実践さながらの試験といえる。
まずは予選を突破しなければならない。
各工程を簡単に説明しよう。
―― 要件定義は、どのようなプログラムを、どの期間で開発するのか決める。
―― 設計は要件定義を元に、製造するために必要な設計図を書く。
―― 製造は設計図をもとにプログラムを書く。
―― テストはつくったプログラムが設計図どおりにつくられているか試験する。
俺はすでに要件定義が完了している為、プログラミングの設計を進めていた。
今回の課題は”人工知能における、インターネットからの情報収集と活用”とかなり旬な技術ということ、そして俺がもっとも興味がある分野だけに俺のモチベーションは燃えに燃えている。
プログラム言語、通信、データベースと決めることはたくさんある。
俺は書籍やインターネットを駆使して、情報を集めて、設計を進めていった。
どれくらい時間が経っただろうか気が付くと、外はうす暗くなっていた。
きりが良い所まで進めたので、俺はふぅーっと椅子にすわった状態で身体を反らせながら背伸びをする。
こうすると肩、背中にたまった疲れがすぅっととれるのだ。
そして机の上からスマホを手に取り、チャットアプリを起動すると、凛さんから新着のメッセージが届いていた。
凛さんというのは、1歳年上で同じ高校に通うお隣のお姉さんだ。
俺はすごい落ち込む時期があって、その話はまた今度するが、凛さんはつらい時期にずっとそばにいて、俺の事を支えてくれたとても優しい人。
親のいないに俺に家族のように接してくれる。
メッセージを見ると『恭ちゃん、ちゃんと休憩とってるかな? 休みの日だし、あまり紺を詰めすぎないようにね。君の事だから言っても聞かないだろうけど(笑) 課題の邪魔をしたくなかったので、君の家の玄関のドアに夕ご飯をかけておいたから、よかったら食べてね』と書かれていた。
俺は腰を上げ、部屋を出て玄関へ向い、ドアにかけてある袋を手に取り部屋へ戻る。
そしてパソコンデスクに袋を置き、中からお弁当箱とスープポットを取り出す。
お弁当箱を開けるとサンドイッチが綺麗に盛り付けてあった。
サンドイッチの種類は卵サンド、野菜サンド、肉サンドで、卵サンドはふわとろ感がはんぱない。
肉サンドから漂う香ばしく、甘辛い香りは鼻腔をくすぐり、食欲を刺激してくる。
肉サンド、卵サンドと続けて頬張る。
ううむ、肉サンドも卵サンドも美味しいな。
スープポットをあけ、付属のコップにとくとくと注ぐ。
コーンたっぷりのコーンスープが入っていた。
コップを片手で持ち、ず……とすする。
ずず……、もうひと一口、ずず……。
甘味たっぷりのまろやかな味だ。疲れた体に染みわたりとても癒される。
最後に、野菜サンドを頬張る。
レタス、キュウリ、トマトのスライスに凛さん特性ドレッシングで和えている。
野菜嫌いの俺もおいしく食べることができるよう考慮されている素晴らしい一品。
俺は夕飯をたいらげた後、『おいしかったよ。いつもありがとう。今日やりたかったことも一通り終わったので、この後は少し進めてゆっくりする予定』と凛さんへメッセージを送った。
凛さんって、美人で家事全般をそつなくこなすし、絶対素敵なお嫁さんになるよな。
彼氏いるのかな? 絶対いるよね。世の男たちが絶対放っておかないよ。
まぁ俺には関係ない話だが。
凛さんからすぐに返事がきて、
『よかった、一息つけるんだね。お疲れ様♡ それと……明日は私の家で夕飯食べるよね? ご馳走つくって待ってるから楽しみにしていてね』
メッセージをみて、おもわず頬がゆるむ俺。
俺は凛さんに家に行くことをメッセージした後、スマホを机に置き、設計書の修正に取り掛かかった。
それから数分が経った頃、チャットアプリに新着メッセージがきた。
凛さんからのメッセージとおもいきや、
『ミスターXさんが、友達申請し承認しました』とスマホにメッセージ。
このメッセージはスマホのコミュニケーションアプリに新規に友達申請があった時に表示される。
ミスターX……誰だ?
俺の頭の中に疑問符が浮かぶ。
このように訳の分からない名前をニックネームに設定されると、確認するのに手間がかかるから、至極困る。
基本仕事先関係の人からしか申請はこないから、自動承認設定としていたのが仇となってしまったか……だけど手あたり次第に確認していけば、わかるはずだ。
届いたメッセージには、
『私の名前はミスターX。Xとよんでくれ』
まさかのニックネームでの挨拶。
ここは本名を名乗って欲しかったところなんだが。
まぁ自己紹介もせず、いきなり要件を言ってくるやつよりはましだが、どちらにせよ、これじゃあ誰だか全くわからん。
俺はミスターXに返信することに、
『ミスターXさん、すみませんが名前教えてもらっていいですか?』
『私の名前はXだ』と返事がきた。
まさかの回答に言葉を失う。ん? まてよ……Xって名前は……あっ外人か? 俺はすぐに外人の名前についてパソコンのブラウザを開き検索、かちかちっと数ページ流し見る、結論としては外人ならあるっぽいことが判明、しかし俺には外人に知り合いはいないのだ。
『アナタハガイジンサンデスカ?』
外人を意識した瞬間、カタカナになる俺。
『…………』
それから数秒経って、
『イヤ、ニホンジンデスケド』
あっさりと否定するミスターX。
俺ののりに付き合って、カタコトで返答してくれるなんてミスターXはノリがいいやつだなっと、遊んでる場合じゃなかった。
俺は腕を組み状況を整理する。
今わかっていることは……ミスターXは俺の電話番号を知っている。名前はわからない。ノリがよさそう。それだけか、情報が少なすぎる。
頭が整理しきれず俺は再度同じ質問をしてしまう。
『お名前は?』
『だから、Xだって』
Xと断言するミスターX。
ごめんね、同じこと聞いちゃって。
でも、もしかしたら名前を教えてくれるかなって思ったんだよ。
念のため、俺は名刺フォルダを取り出し、Xという名前の人がいないか調べるが、もちろん存在しなかった。
ミスターXは、誰かと間違えているんじゃないかとおもい、
『たぶん、メッセージ相手を間違えていると思います。俺の知り合いにXって名前の人はいないし』
『いや間違えていない。君は斎藤恭介君だろ?』
間違えてないらしいです。
はい、俺はどうすれば?
誰なんだこいつはぁああああああああ。
でも俺のことを知っているってことは、面識があるってことだよね?
もう一度、もう一度だけ確認することにした俺は、
『Xって本名ですか?』
『正解』
まさかの正解。
俺の質問の仕方が悪かったのか……だけど、正解ってなんだよ。
クイズじゃねぇんだよ。
それじゃあと、
『すみません。本名を教えてもらっていいですか?』
『それは秘密です』
きっぱりと答えるミスターX。
本名なんてもういいや、とりあえず何関係のつながりかだけでも教えてくれ。
『本名が言えないことはわかりました、しかし少なくても何関係のつながりかきかせてください。俺の高校関係、それとも仕事関係の方ですか?』
『それは秘密です』
『秘密ってどういうことですか?』
『いや、君に知る権利はない』
「…………………」
すごい上から目線のメッセージに唖然とする俺。
俺はミスターXに次のように返してやった。
『素性がわからない人とメッセージするほど暇じゃないので、失礼します」
すると、
『まて、君に頼みがあってメッセージしたのだ』
あせるミスターX。
『だから、秘密だらけの人とメッセージするほど暇じゃないんだよ!」
素性を語れない知り合いなんていないはず、ミスターXはスパムも同然だ。
『しょうがないな。これは奥の手だったのだが、これを見てくれ?』
俺は両目見開いた。
ミスターXが提示してきたのは、俺がプログラミングコンテストで使用予定の要件定義書の一部だった。
『それをどこで?』
『それは秘密です』
な、なんにも言えねーのなミスターX。
どうやって手にいれたんだよ。
こいつもしかして、超凄腕のハッカーか?
『私の頼みを聞いてくれない場合は、君の大事な要件定義書の安全は保障できない』
どういうことだ?
なんか俺、いつのまにか脅迫されてないか?
安全を保障できないって、言うことをきかない場合は、どうなっちゃうんだよ。少なからずプログラミングコンテストに影響がでそうな予感がする。
今更、要件定義からやり直す時間はないし、内容次第だがミスターXの要求を聞くしかないのか。
一気にミスターXと立場が逆転し激しく動揺する俺は、
『わかりましたよ。頼み事ってなんですか? やっぱりお金ですか? 俺あんまりお金もってないですよ』
『いや、お金ではないよ』」
『まさか俺の体? モーホーですか?』
『ばかいうなっ。そんなわけあるか!』
メッセージからミスターXの動揺がうかがえる。
『それじゃなんです?』
『明日、君の学校に転入する
『如月詩愛にどんな秘密があるんだ?』
『それは私の口からは言えないから、自分で彼女と接触して守るべき秘密をみつけてくれ』
おい。
どんな秘密かわからないのに、守りようがなくないか、どうやってみつけるんだよ?
しかし、これまでのミスターXの言動から絶対教えてくれないだろうな。
俺がいろいろと考えていると、ミスターXは続けて
『ミッションは適時指令をだすから、楽しみにしていてくれ』
ミッションって何だよ。
ドキドキしてきたじゃないか。
しかしこんなところで夢を頓挫させることはできない、やるしかない。
『要件定義書がかかっている以上、ミスターXの指令をこなしてみせる。そんなに如月詩愛の秘密を守りたいんだったら、自分でやればいいんじゃないの?』
『これは君にしかでいないことだし、彼女もそれを望むはずだ』
彼女が望む? ますます疑問が生じる俺。頭の中はぐっちゃぐちゃだ。
続けてミスターX、
『これはいずれわかるだろうが、恭介君と如月詩愛にとって、とても大事なことなんだ』
『俺と如月詩愛にどんな関係があるんだよ?』
『それは秘密です』
予測通りの回答にぷっと噴き出す俺。
しょうがい如月詩愛さんの秘密守ってやろうじゃないか!
俺と彼女にどんな関係があるのだろうか、それにミスターXは一体誰なのだろうか。
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