第二十一話

ビルや建物がどんどん視界に写り消えていく電車の中

お昼から少し日が傾いた頃だろうか中も人がまばら、、、だが


ーー久しぶり外出たちゃったどうしよっ!!俺変なとこないよね?それに女の子と二人っきりって


隣を見ると窓の外を眺めていた少女が視線に気づいたのかこちらを見て微笑む


ーーもうなんだろ、、、この状況女の子といるだけで緊張するなんて、、、小学生かよ、まあ数歳しか変わらないし、、、


「もうすぐ降りますよ?和葉さん大丈夫ですか、少し顔が赤いようですが?」


怜奈が顔を近づけ、、、近いっ!!


「いやっなんでもないから、所で限定品って言ってたけど何買うんだ?」


顔を背けるようにしてそう聞く


「あっそうですねっ、えっと子供っぽいって思われるかもしれませんが、私くーたんって言うクマのキャラクターが好きでそのキーホルダーがイベント限定で売ってるんですよ」


少女は恥ずかしそうにもじもじしている


ーーくまのキーホルダーねそれにくーたん、たしか何かのアニメか何かのマスコット的な奴だっけ?


「全然子供っぽくないと思うよ?可愛いもの好きなのは女の子らしくて俺は好きだけど」


少女を見ると、、、、はっ!?下を向いて顔を赤くしていらっしゃる


「ごっごめんっ!!変な事言っちゃって」


次は陣川じんがわ次は陣川です


「つっ、着きましたよ、行きましょ和葉さん」


それからイベントが開催された場所に行くまでは会話も少なくただ少女に着いて行くだけだったが


「わあくーたんのもっふもふっ」

「ねえねえあっちにいこっ」

「くーたんと一緒に写真撮れるんだ、行こ和葉さん」


イベント会場に到着し会場内をまわっていると、俺自体このようなイベントに参加参加したことがなく少しワクワクしていたが

それより眼の前を歩く少女がキラキラ輝いて見えていた


ーーやっぱり好きな事をしている女のコはこんなに可愛いんだな






イベント終了時間の少し前売店が見えるベンチで俺は座って少女を待っていた


他のイベント参加者も同じ目的なのか売店は溢れるほど人が並んでいる

俺がここにいるのは特に欲しいものは無いし、人混みの中にいるよりわかりやすい所にいた方が合流しやすいという少女の作戦だ


しばらく待っていると小さな紙袋を抱えた少女が走って近づいてくる


「お待たせしてしまいすみませんっ!」


「そんなに待ってないと思うから大丈夫だよ、目的のものは買えた?」


「はいっ、バッチリ買えました!」


「ん、なら帰ろう、日が沈み始めてるし心配させてしまう」



立ち上がり元来た道を戻ろうとすると服の裾を掴まれる

振り向くと

夕日で顔が赤いのか少女は俺の裾を掴み紙袋を抱えながら俺を見上げる


「どうした?」


と平常心で言ったつもりだが内心は緊張で鼓動が波打っていた

まわりの帰宅する人の声が聞こえなくなるほどドクドクと激しく心臓はなっていた

ここから早く開放されたいと思っていると少女が口を開く


「あの、、、、これ」


少女は持っている紙袋から青色のくまのキーホルダーを俺に差し出す


「私の我が儘を聞いてくださったお礼というか、、、よかったらもらってくれませんか?」


これを受け取らないという選択肢は存在するのだろうか?俺はその選択肢は選べないけど


「ありがとう、それじゃあ貰うね」


受け取り他に付けるところもなかったので端末に青いくまのそれをつける


「和葉さんっ!!」


「うおっ!?」


いきなり少女が抱きついてくたので端末を落としそうになるがなんとかどっちも受け止める


「すっすみません!!私嬉しくて」



嬉しいからって抱きつくの女の子としてどうかと思うけどまあいいか


「それじゃあ家に帰ろう」




帰り道


「ねえ和葉さん」


「ん?」


「私兄妹いた事ないので分からないんですけど兄がいたらこんな感じなんですかね?」


「どうだろ?俺も1人っ子だったし、けど兄妹ねえ」


「あっあのー、和葉さん」


「なに?」


「よければお兄ちゃんって呼んでもいいですか?」


「なっ!?」


ーーまてまてどうしてそうなったなんで今日一緒に出かけただけで和葉さん呼びからお兄ちゃんなんだ!?

今までほぼ話したことない俺だぞ

確かに一緒の家に住んではいるし

でも


「私、昔から兄か姉が欲しかったんですよ、私の友達は皆兄弟がいて、お母さんも仕事で家にいる時間が少なくていつも夜は1人で、、、」



「わかった、血も繋がってないし全然話したことない俺だぞ?」


「それはこれから仲良くなっていけばいいじゃないですか!!」


もういいやこの子のとんでも理論に何を言っても無駄な気がしてきた


「よろしくねっ、お兄ちゃん!!」


この日俺達は兄弟になり、俺は引きこもりを卒業した


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