第六話
一年前の秋
僕はただ平凡に過ぎていく日常が嫌で嫌で仕方なかった
変わらない授業風景、幼馴染との会話
学校が終わりすぐ帰宅する日々
度々ゲーセンに行ったりスポーツセンターを訪れたりしたが
何も得た感触はなかった
なにか足りない物足りないと言うかもやもやが僕の心を濃い霧のようにかかっていた
その日は授業が終わり「少し用事があるからと」幼馴染に別れを告げ
ただひたすら何も考えず校内をぶらぶらしていた
校内には大会前なのか陸上部がグラウンドを走っていたり
教室でだべる生徒
もうすぐ次期生徒会長を決める為に募集のポスターを貼っているどこかの委員会
それぞれが目的を持って行動していた
何も目的がないのは俺だけ
彼らと俺は何かが違う気がした
その場にいたくなかったすぐ逃げさりたかった
人がいない場所へ
気がつくと屋上への階段を駆け上がっていた
息が乱れ心臓もバクバクなっている
階段を一段飛ばしで駆け上がり
扉を勢いよく開けると
視界が真っ赤に染まり思わず目をつぶる
ゆっくりと目を開くと夕日が僕を照らしていた
僕は飛び降り防止用のフェンスへ近づき
手で光を目に受けないようにしながら夕日の方を見る
ーーいい景色だここは僕の心と違い煌びやかに輝いている
ちょうど夕日が水平線の彼方に沈み始めた時に此処にこられたおかげか
夕日の光が海に反射し海がのオレンジサファイアの絨毯のようになっている
ーーあの絨毯の先に何があるのかわからないが少なくとも俺はあの絨毯を歩けるような人間じゃないのは確かだな、けどこの景色を見ていると心が落ち着く
「おや?先客か?珍しいなこんな時間に」
声がし多方向を振り向くと女性がドアに背を預けこちらを見ていた
腰まで長く伸ばした黒い髪
スラリとしているスタイル
172cmの僕より少し小さくらいの背
そして風紀員と書かれた赤い腕章
胸元の赤いリボン
「風紀員の先輩さんですか俺もう帰りますから」
胸元のリボンやネクタイで学年が分かる
今年は3年が緑2年が赤、一年が青だ
俺は先輩の脇を通ろうとしたとき
肩を引っ張られ先輩の方を向く形になり先輩の顔を見つめる
ひとつ気づいたのは先輩の目が少し赤みがかかっている事だ
少し赤い目は先輩の肌が白っぽいせいか少し目立って見える
その目から目をそらそうとするができない
まるでその目の中に吸い込まれるんじゃないかという感覚が俺を襲う
「私は
先輩に見とれていて一瞬何を言われたかわからなかったが
先輩が手を差し出して来ていたので理解する
「白崎 和葉です」
先輩の手を握り握手する
そんな出会いが俺を変えてくれたことはまだ僕はまだ気づかない
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