第14話 黒髪
その朝も、揚羽が菊の髪を
菊の巻き毛は、朝起きたばかりの時は特に言うことをきかない。
紅は、揚羽が菊の髪を
「何なの、これは?」
菊が尋ねると、
「
紅は手を休めずに言う。
「でも、私は菊さまのお
揚羽はその言葉にカチンときたらしい。
「女の黒髪は象をも
紅はひたと揚羽を
「私は、自分の髪の力で象を繋ぐことが出来るとは思っておりません。」
先に目をそらしたのは揚羽の方だった。黙って紅を手伝う。
紅は髪をさすりながら考える。
そう、他人にはわかるまい。
私と喜平二さまのお心は、髪なんかで結ばれているのではない。
あの日、
私たちがほんとは何で結ばれているかを知る者は誰もいない。
明けて天正七年の正月、城では
戦況は
菊は景勝の隣に座っていたが、紅は下座に控えている。主君の
そのせいか、紅にも何か一つ、と
紅は侍女に愛用の笛を持って来させると、
紅は改めて笛を構えると吹き始めた。美しい玉が次から次へと転がり出てくるような耳慣れない不思議で軽快な曲で、確かに素晴らしいのだが、あまりこの場には似つかわしくないようだ。
何だろう、この曲は、と甲斐から来た者たちは
だが、上杉の諸将の反応は違った。口々に、これはこれは、先代が戦陣で夜、よく
菊は改めて、紅と先代の浅からぬ
(越後に来てから一年くらいしかたたないのに、紅は何故、先代の
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