第108話 釜茹で
三条河原に
盗賊の処刑を知らせるもので、そのこと自体は珍しくもなかったが、京雀の
なんと、
高札の前はたちまち人で
その中に
老人を乗せた輿がたどりついたのは、一条戻り橋の近くにある上杉家の屋敷だった。書院に通されると、この家の側室が応対に出た。
「それ、いつぞやの『借り』。」
信虎が言った。
「返してもらうときが来たようじゃ。」
「かしこまりました。」
紅は微笑した。
「
しゃあしゃあとして言う。
「探られるのもどうかと。」
「うむ。」
「そのかわり、この手のことに、うってつけの者たちを
猿若は、慶次郎の元を訪ねた。
彼は刀をずらりと並べて手入れをしている。
さすが歴戦の
「最近、ちっとも店に顔をお見せになりませぬな。」
「ちと行きづらくてな。」
この男にしては珍しく、気弱なことを言う。
「姫君はお元気か。」
「
猿若が言いよどんでいると、慶次郎が、
「何だ?」
いやに鋭く尋ねる。
「いや、何か、
「ふうん。」
あんまり
(何ゴネてんだ、コイツ)
「何かございましたか?」
「いや、ううん。」
ちょっとムッとした顔をした。
「
「詮索ではございませぬ、
「うるせえ。挨拶なんぞ
(おやおや)
こりゃ
「俺も呼び出されている。」
慶次郎が言った。
猿若がまじまじと見るので、付け加えた。
「
「
「さあ、謝らせたいんだろうよ。」
慶次郎はつまらなそうに言った。
「でも、謝りたくねえ。」
「
と、猿若。
「それにしてもあなたさまの腕なら、達丸さまお一人さらってくるくらい、
「姫君に言ったが」
慶次郎は大声で言った。
「断られた。今頃、
(ああ、それでスネてんのか)
「まあ
猿若が言った。
「もっともそれも、太閤が
「奴も
「今日、伺ったのは」
猿若は
「会っていただきたい方がいらっしゃるからです。」
慶次郎は刀を片付けて、腰を上げた。
「
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