第27話 猿楽
闇にまぎれて峠を越すことになり、一行は
疲れきった人々が早々に眠りに落ちると、猿若は一人、
(囲まれている)
(織田は忍者嫌いと聞いたが)
前方に数名、後方に二、三名。こちらの動きにはまだ気づいていない。
猿若は地面を
「よおし、いい腕だが、そこまでだ。」
ぽっと小さな灯がともると、
猿若は身構えながら静止した。
「どうせ、ぬしも金で雇われた身だろう。殺すには惜しい、我々の仲間にならぬか。」
銃を手に現れた男はまだ若いが、堂々とした
「忍びとは思えぬな。何者だ。」
「我らは
男は言った。
「わしの名は
金山衆、それは金の採掘に従事した鉱山技術者であり、地侍である人々の集団だ。
「大蔵とは
「わしの父は先代に仕えた猿楽師だったからな。それゆえ、わしも忍びの心得はある。」
道理で、派手で舞台映えのすることよ、と思いながら、猿若はじりじりと動いて
「大恩ある武田の
「
藤十郎は猿若にぴたりと銃の
「御親族衆でさえ裏切ったのだ。頼りになるのは自分だけよ。」
その時、どこからか
すかさず猿若は藪の中に飛び込んだ。
同時に藤十郎たちのすぐ横で地面が爆発した。
猿若は
「礼には及ばない。」
慶次郎はむっつりと言った。
「代わりに俺を
『猿』は苦笑した。
「
「小屋に入る前、仕掛けてただろう。俺はちょいと火を
猿若は舌を巻いた。
彼ほどの
「猿楽の徒は忍びと
越後の海に浮かぶ佐渡の島は、昔から
「その中に
永享六年、世阿弥は、時の将軍・足利義教の
「この世阿弥こそが越後の軒猿の
猿若は、世阿弥の
「それより、お前さまも忍びの技を心得ておいでだな。」
「俺みたいな性格の奴に忍びなんかできるか。」
慶次郎は鼻で笑った。
「何、ちょいと手ほどきを受けただけさ。」
(ちょいと、どころではない)
猿若は思った。
(なかなかの
今、甲賀を従えている大きな勢力。それはたった一つしかない。
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