第23話 鬼子

 闇の中からうめき声がい上がってくる。

(城が……城が……私の城が!)

(ああ、城を失ってしまう)

(城を手放すわけにはいかない)

(ああ、誰のせいじゃ)

(鬼子じゃ、鬼子が城に来たせいじゃ)

(又この城も失ってしまう)

(鬼子じゃ、鬼子のせいじゃ)

 闇に潜んでいた『影』は鬼子が呻くのを耳にした。

 刀がさやから抜かれる音、風を切る刃音。

「う……斬れぬ!」

 荒い息、恐怖の混じった汗のにおい。

 いつ明けるかわからない底なしの闇の中に鬼子がひとり沈んでいるのを、『影』はじっと見ていた。

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