7話 昨日の敵は今日の友
「…………」
「マコちゃんの今の顔を無加工で撮りたい」
「ダメ」
今どういう状況かというと、俺は格闘ゲームを真顔でプレイしておりシズキはそれを楽しそうに後ろから眺めている状況。
何故遊んでいる俺が真顔で、シズキの方が楽しそうにしているのかは俺の尻に聞いてくれ。
「ほら負けちゃうよ?」
「お……私……だって頑張ってるんだから」
俺といいそうになり、なんとか女言葉で話す。
「あぁ〜負けた! こら勝ちなさいよっ!!」
「おっ、押しゃなっ……押さなっ……いでっ!」
押されてお尻の位置がズレ、その快楽で身体がガクガクと痙攣するがなんとか我慢する。
そうしてシズキと格闘ゲームで遊んでいると、向かい側の対戦相手の台からこちらの様子を伺う男の顔が見えた。
「っ?」
「おぉ! 美人じゃねぇか!」
一瞬顔が白い包帯で覆われていて分からなかったが、そいつはこの前学校にやってきた大男だった。
他の金魚の糞もそいつの周りにいて、一緒に格闘ゲームで楽しんでいたようだ。
「次の対戦もよろしくなっ!」
「……」
この男、学校じゃあんなに暴れ回ってたのにゲーセンじゃ純粋に楽しんでやがる。
「マコちゃん、暴力は絶対にダメだからね。私マコちゃんが怪我する所見たくないの」
「シズキ……」
「本音だよ」
「はうっ!」
そう言いながら腹部を抑えてくるシズキの本音が分からない。でも嬉しいし気持ち良いから問題ない。
「頑張って」
「んっ……絶対に勝つっ!」
リアルであの大男に勝てたのならゲームでも絶対に勝ってやる。そうシズキの応援で心に誓い本気を出すことにした。
──カチャカチャッタタン
「んっ……ふぅっ……」
自然と全身に力が入りお尻の快楽も強まってくる。
「先輩壁に追い詰められてますよ! やばいっすよ!!」
「あの姉ちゃん急に動きが変わりやがった!」
「あっっはっ……」
向こう側では熱狂しているというのに、今の俺の頭は薬物でも使ってるのかと思う程痺れていた。
「あの姉ちゃん戦いながら笑ってます! やばいっすよ!!」
「恐ろしい奴だっ……くそっやばっ……」
「んぅっ……勝っ…………たぁ────っ!!」
──ビュッビュルルルル (※ゲーム内の勝利の効果音)
You win の表示と共に快楽が腰から脳にかけて全身を駆け巡る。
「あっ……あへっ……」
──カシャッ
「マコちゃんその顔最高、私の今日のオカズ確定ね。早くトイレに行きましょう」
すぐにシズキにトイレに連れていかれて色々な処理を済ませる。
「……ハマりそう」
勝負と快楽が合わさり、この特殊プレイに完全にハマりそうになっていた俺は手を洗いながら息を整えていた。
「マコちゃんの最後のコンボは完璧だったわよ」
「うん、私凄い集中してて防御とかも完璧だった」
多分毎回あのクオリティの戦いができればプロゲーマーも目指せるんじゃないかと思う程完璧な動きができて満足していた。
トイレから出ると、あの大男と金魚の糞達が俺を待っていた。
「姉ちゃんナイスファイトだったぜ!」
「あ、ありがとう。貴方も凄く強かったよ」
昨日の敵は今日の友とはこういう事だな。
「しかし姉ちゃん強いな! SNSのアカウントとかあったら教えてくれねぇか?」
「えっと〜……いいかな?」
シズキに聞くとコクンと頷いた。
一応俺にもマコというSNSアカウントがある。所謂ネカマという奴だが、まだ男だとバレた事はない。なんせ俺の女装は完璧で日頃から可愛い自撮りだって上げている。拾い画と疑われることもない。
大男にIDを伝えるとすぐにスマホで調べ始めた。
「マコ……マコちゃんっていうのか。おっほぉ! 可愛い写真沢山あるじゃねぇか! フォローしたぜ」
「フォロー返すね」
一応フォロワーは少ないが2000人はいる。相互フォローしている為にダイレクトメッセージなんかでセクハラな言葉を送られてくることもある。
どうやらこの大男の名前は猪塚(いのずか)というらしい。
「よっしゃぁぁあ!! ありがとう!」
「また会ったら一緒に戦おうね」
そういって猪塚と別れる。
「毎日のオカズ決定だぜ」
「先輩気持ち悪いっすよ!」
「でも最近落ち込んでたけど元気になってくれて良かったっす!」
俺をオカズにする人がいる、という妄想だけで俺も気持ちよくなれる。変態だと思うだろうが、多分誰でも女装してエッチな妄想をされる快感を知ればハマること間違いなしだ。
「それじゃマコちゃん帰ろう」
「そうだね。なんか今日1日で色んな事に目覚めちゃった」
「ふふふっ、マコちゃんがどんどん可愛くなってくるから私嬉しいっ!」
シズキが俺の腕に抱きついてきた。
普段こんなことをする人間じゃないのに、シズキの言う事を聞くとこんなにも甘えてくれる。
「えへっ、じゃあこれからも頑張ろうかな」
やっぱり女装は辞められない。
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