第7話 走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!

「こいつがSNSで、電波利用を考えるコラムを投降していて、そこで使ってる名前がエターナル何だよ」


 後輩は説明を聞いても、納得がいかず眉を寄せシワを作る。


「で、エターナルってのは……」


 親切に教える同期を十和田が遮ろうとする。


「おい、止めろよ!」


「と・わ・だ」


 後付けが解りやすかったのか、月宮後輩は読み解く。


「もしかして……十和田先輩のトワの部分と永遠のトワを掛けてエターナル? え? ダ……」


 後輩は思わず、飛び出しそうになった言葉を呑むが、十和田は勘づく。


「お前、今、ダサいって言おうとしたろ?」


「いえ、別に……」


 後輩を問い詰めようとする、意地悪な先輩から偶然、後部座席の櫻木が助け舟を出す。


「エターナル。電界強度が強くなった……近いぞ!」


 それを聞いた十和田の目は、当たりクジを引いた少年のように輝く。


「おぉ!? 来た、来た、来た! 新人。運転代われ!」


「は、はい?」


 道路の隅に車を止めるよう指示すうと、助手席から出て運転席に回り、戸惑う後輩を引きずり出す。

 運転席に乗り後輩が慌てて助手席に乗り込むと、十和田はDEURAS《デューラス》‐Mを急発進させた。


 電界強度とは違法電波を特定する際に利用されているシステムでDEURAS‐Mにおいて、違法無線の距離を捉える目的で使われている。

 電界強度を計るメーターは、サークルの中に簡略化したエスカレーターを思わせるランプがあり、下層部分の緑色ランプが弱、中層の黄色ランプが中、上層の赤ランプが強を現している。


 現在エスカレーターは上層の赤ランプ。

 周辺に違法電波を発する基地局が、DEURAS‐Mの周辺にいる事になる。


 そして基地局の場所を特定する為、備え付けられたモニターには近隣の地図がデジタル映像で表示され、赤いラインが幾つも交差している。

 ラインが交わる部分は円で囲まれ違法電波の位置を導きだしていた。

 後部座席では監視する同期の櫻木が指示を出す。


「エターナル。次の十字路を左に曲がって南側に行け」


 十和田がハンドルを大きく左に回すと、ワゴンは車体を激しく揺らしカーブする。

 それに伴い車内の人間は、遠心力で右へ身体を強く引っ張られる。

 月宮後輩が苦言を呈す。


「先輩! スピードの出し過ぎじゃないですか!?」


「何、言ってんだ! 今、追い詰めないと次いつ遭遇するか、解かんねぇだろ!?」


 そう言うと、ハンドルを切り、前方の乗用車を猛スピードで追い抜く。

 ハリウッド映画さながらのドライビングに、ハンドルを握る十和田は自身に酔いしれるが、助手席で体を振られる後輩は酔ってしまい顔が青ざめて行く。


 そして、前方に軽トラックが見えた時、同期の櫻木が呼ぶ。


「エターナル! 反応が強くなって来たぞ」


「逃がすか!」


 前方を走る軽トラックを目視すると、それまで荒かった運転を止め、トラックとの間に適切な車間距離を作り、尾行に気付かれないよう走行する。

 十和田は発見した軽トラックから目を外さず同期に投げ掛ける。


「櫻木。どうだ?」


「ビンゴ! 前の軽トラが出す電波だ」

 

 それを聞いた電波監視官、十和田は満面の笑みで言う。

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