第3話 走れ!

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KA,1 走れ! 電波監視官!?



 木枯らし吹く秋の季節は、夏の葉を緑色から赤茶や黄色に染め、環状線から外れた住宅地をリトグラフのように見せていた。

 住宅地の真っただ中をモーゼの如く、西武線の線路が貫き大きくカーブする。


 紺色のジャンパーに身を包み、「総務省 関東総合通信局」のロゴを背負う男。

 背は平均的で、華奢な体格。

 髪型は公務員と言うのも有り、黒色だが、毛先を遊ばせて、全体的に跳ね上がっている。

 十和田とわだ電波監視官は、呼ばれた声の方へ振り向く。


「先輩……この辺り、何も反応しませんよ?」


 女性職員に呼ばれ、十和田は彼女の元へ、だらしなく足を運ぶ。


 新人職員の月宮は、十和田よりも背が低く、目鼻立ちも整い愛らしい顔つきをしている。

 長い黒髪を後ろで結んでいるところが、彼女の真面目な性格を現しているようだ。

 彼は呆れながら、彼女が持つ機材を取り上げる。


「お前、どこ調べてんだよ。もっと、ちゃんと調べろよ」


 計測器は、大きなハンドガンを思わせる、形をしており、銃身と呼べる部分は上部と下部にスキー板のような受信装置が付いている。

 グリップがUの字に反り返り、ケーブルで数値を現す、箱型の記録装置に繋がっている。

 まるで未来世界のレーザー銃のようだ。


 十和田に測定器を取り上げられて、少し気分が落ち込んだ、月宮後輩を他所に彼はセンサーをかざし周辺を調べ結果を読む。


「……何も反応しないなぁ」


 それを聞いて後輩は、爬虫類のように、冷たい目線を彼に向けた。

 その目線に、いたたまれなくなり彼は思わず謝る。


「悪かったよ…………場所を変えるぞ」


 二人の電波監視官は歩き始めた。


 TTT TTT TTT,


 東京でのオリンピックが予定され、開催会場や移設問題で揺れる中、日本国内で安全な開催と運営を目的とした、協力体制が各省庁や地方機関で進められている。


 その一貫として、平成二十七年から地元警察と総通局、合同の元、不法無線局の取り締まりを目的とした、活動が“電波利用環境保護・周知啓発強化期間”である。

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