第93話 両親

教えてくれると言う事は、裏を返せば、魔法を解く方法はあるということだ。


まずは、保護している方たちを治す術を聞くのが私の第一の任務だ。ここは彼女に従うしかない。


マカロンを手に取り、食べる。

それを見て、メイちゃんは嬉しそうにティーポットから紅茶を注いだ。


「私も初めてマカロン食べたけど、美味しいね」


「でしょー。小夜ちゃんなら、わかると思った」


「これ、色によって味が違うの?」


「違うよー、さっき食べた緑のはピスタチオ味で、この紫はブラックベリー味、このピンクのはフランボワーズ味だって」


色とりどりのマカロンを指差し、メイちゃんは嬉しそうに説明する。


淡いピンク色のマカロンを手に取り、口に入れる。

さっきのマカロンとは違う味がするが、フランボワーズがなんなのかは、わからない。


「フランボワーズって、なんなの?」


「メイもわかんない」


口の中でほんのりとバターの味がする。

入れてもらった紅茶をすすり、彼女に尋ねる。



「最近は何をしていたの?」



「それは小夜ちゃんが出て行った後のこと?」



言葉に棘があるが、顔を見る限り悪意はないのだろう。私は「そう」と答えて頷く。


「色々あったよー。アルバイト始めたり、いじめられたり、学校辞めたり、魔法を使えるようになったり」


指を折りながら、答える。

答えるにつれて口元がつりあがっていく。


「いじめた人達に仕返ししたり、メイの邪魔する人をやっつけたり、パパとママを見つけたり」


両脇の人形を掴み、自分の方に椅子を寄せる。


「ほら、また一緒になれたんだよ!」


悪意のない満面の笑みを私に向ける。

人形達は恐怖のうめき声をあげるが、彼女には聞こえていない。


「メイの夢が叶ったんだよ!これでずーっと一緒」


人形を縛っていた縄が自然に解け、両腕で人形になったパパとママを抱き寄せる。


「もう離れ離れにはならないの。ずっとずっと一緒」


このお茶会で幸せを感じているのは、彼女しかいない。





「正気じゃない」





私は万年筆の先を彼女に向けた。


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