第94話 レーザー銃



「なあに? それ?」



彼女は不思議そうに、向けられた万年筆を見る。



「レーザー銃」



右手に持つ万年筆から熱が伝わり、手のひらから汗が吹き出る。それは熱だけが理由ではない、嫌でも右手が小刻みに震えてしまう。


落としてしまわないように、強く握りしめ、エネルギーを充填することで出来たボタンに親指を置く。


いつでも発射できる状態だ。



「れー ざー じゅう?」



彼女は聞き直すと高らかに笑った。

耳をつんざくような甲高い笑い声だ。


「本当の本当にレーザー銃なの!?」


両親を強く抱きしめ、お腹を抱える。

人形達はうめき声をあげる。



私は手元の万年筆を見下ろし、答える。


「多分」


性能の程を試していないので、はっきりと答えられない。


これはどれぐらいの威力があるものなのだろうか、先輩と主任の扱い方からして、物凄い威力があるものだろうと思っていたが、面前で笑われて自信をなくす。



そもそも、レーザー銃ってなんなんだろう。



このボタンを押したら何が起きるのだろうか。

人を殺めるほどの殺傷能力があるのだろうか。


しかし、彼女に対抗する手段はこれしか持っていない。私は彼女に向けた腕を下ろさない。




「本当を言うとね。メイ、小夜ちゃんに会うつもりだったんだ」




目に浮かぶ笑い涙を手で拭い、彼女は言う。


「どうして?」


「小夜ちゃんとメイは姉妹でしょ」


彼女の顔が私の知っている昔の顔に戻った気がした。

私のことを時にはお姉ちゃんと呼んでいた。昔の顔だ。


「家族は一緒にいないと」


彼女の人差し指が私に向けられる。




「これからは、ずーーーーっと一緒だよ」




私は震える手でレーザー銃のボタンを押した。

瞬時に手のひらの中で熱がほとばしり、轟音と共にペン先から赤く輝く光線が発射された。


光線は私に向けられた彼女の右腕を焼き飛ばし、壁を貫き大きな穴を開ける。穴からは、焼き付いた煙があがり、木の焦げた匂いが部屋に充満する。



呆然と、右肩から先を失った部分を見つめると、彼女は絶叫した。








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