第33話 謝罪
「あ、妖環課の補佐がいるよ」
大森さんが指差す先には河童がいた。
メガネをかけ、スーツを着込んだ河童が食堂でテーブルに座って昼食を食べている。
「ほら、ビッグバン。昨日の件を謝りに行った方がいいんじゃない?」
河童補佐の頬には大きな白いガーゼが貼られている。
「なんで今も着ぐるみを着てるの?」
「あれ?忘れたの?」
今井君がキョトンと私を見つめた。
「妖環課の補佐は河童だよ」
「え?」
「昨日話したじゃん。僕も最初は驚いたよ」
大森さんも頷きながら「ねー」と同意する。
2人はあっさりと衝撃的な非現実を受け入れている。私だけ酔っているうちに置いてきぼりになったようだ。
「ちょっと、、謝ってくる」
私だけが受け入れられないまま、席を立つ。
河童補佐は昨日のような粘液のテカリはなく、清潔感があり、シワ一つないスーツを着こなしている様は、自然と厳格さを漂わせている。
どこかの課長とは違う。
昨日の歓迎会の時は、よほど役に成りきっていたのだろうか。イベント事にも全力で取り組むくらいなのだから、情熱的な補佐なのだろう。
「あの」
私が声をかけると、河童補佐は冷やし中華を食べるのを止め、箸を置き、こちらを向いた。
それだけではない、賑わっていた食堂がシンと静まりかえり、みんながこちらの動向を見ている。
小声でヒソヒソを話し声が聞こえ、その中に「ラウンドツー?」と期待混じりの声があるのを私は聴き漏らさなかった。
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