第32話 呼び名

「よお! ビッグバン!」


「頑張れよ! ビッグバン!」


食堂でカツカレーを食べ終わり、お茶を飲んでいると、新聞を読んだであろう見知らぬ方々から声をかけられ、肩をポンポンと叩かれる。



「すごいなー。同期で最初に名を上げたかー」

今井君が羨ましそうに声をあげる。


「どうしよう。小夜ちゃん、これからはビッグバンって呼んだ方がいい?」



「やめて、やめーてー!」

慌てて制する。


「名を上げるって、そう言う事なの!?」


「なんでも良いらしいよ。何か周囲が認める事をしたら、脱ルーキーらしい。ただ、本名で呼ばれる人もいれば、その時に付いたあだ名が定着する人もいるらしいよ」



「、、、定着」



私が呟くと。

今井君はお茶を飲み干し、答えた。



「定年まで」



これが地獄の始まりか。



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