第10話 回答

見間違いではない。

部屋に入って来た時から、今さっきまでの間、テーブルの上に羊羹などなかった。


羊羹だけではない、急須も湯呑みも部屋に入った時にはなかったはずだ。


気付かないはずがない。

これは突如、テーブルに現れたものだ。



床についた手のひらから、コンクリートの冷たさが伝わる。


腰が抜けて、立てない。



「それで、君の答えはどっち?」


羊羹を食べ終わった男が皿をテーブルに置くと、質問をした。


「あまり意地悪をしないでください」


身体がふわっと浮いた。

窓際にいた女性が私のお腹まわりを掴み上げ、腰が抜けている私を立たせてくれた。片手で。


どこにその力があるのだろうか。

私は自慢ではないが、細身のタイプではない。しかし、謙遜ではないがぽっちゃりでもない。


同年代の全国的平均体重と信じているが、それをこの華奢な女性にいとも容易く片手で持ち上げられてしまった。


まるで、雑貨品でもを持ち上げるがごとく。



私はうまく自重を支えられない足を動かしながら、また椅子に座りなおす。


「いやまあ、あってもいいんじゃないですか?」


正直な気持ちを答えた。

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