第9話 羊羹
何か変な事は言われた気がした。
男を見ると、今までの笑いは消えており、真顔で私を見据えている。
「もう一度訊こう。魔法って信じる?」
「魔法ですか?」
何を言っているんだ?この人は。
内心ではそう思いつつも、聞き直す。
が、彼はさも当たり前のように答え直す。
「そうそう、ま ほ う」
男はそう言いながら、手に持っている皿の羊羹に爪楊枝を刺し、一口で頬張ると口をもぐもぐとさせた。
羊羹?
いつの間に皿を持ってきたのだろうか。視線を下げると、私の分の羊羹がテーブルの上に置かれてある。
私が驚きで飛び退くと、足が椅子に引っかかり、大きな音を鳴らして椅子と仲良く床に倒れ込んだ。
「君は良いリアクションするねー」
スカートを限界まで広げ、倒れる私を見ながら呑気に咀嚼を続けている。
「やっぱり、お茶と羊羹は合うよね」
「、、、、、なんで?」
疑問符だらけの頭から、全てを振り絞って3つの言葉を口に出すと、全てを跳ね返す3つの言葉が返ってきた。
「なにが?」
何故か満足げな顔を浮かべて、2つ目の羊羹を口に頬張る。
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