第16話

思えば、うちの家は昔からおかしかった。

二階でテレビを見ていたら三階でトタトタと何かが駆け回る音がしたり、コップを出すときになぜか一人分多く出してしまったりと、まるでもう一人見えない家族がいるようであった。

飼い猫が見えない何者かににゃーにゃー鳴くこともよくあった。



さて、片桐に妄想空間に入るな、と言われたばかりだったが、もともと自分の意思で出たり入ったりできるわけではない。

その日、学校から帰った俺はベットに寝転がっていた。どういうわけか誰も帰ってこない。そして、外からの物音が聞こえていないことに気付く。

ベランダに出て外を見ると、車一台どころか通行人一人いない。

明らかに何かおかしい。

時計を見て、明らかに異常事態だと分かった。

学校から帰って来てから時間が進んでいない。

これは・・・妄想空間じゃないか?

しかし、場所が家の中だということが妙だ。

この家の構造を知っている人物となると、家族ぐらいしかいない。

となると、家族の誰かに妄想空間を作り出せる人間がいることになる。

誰だ?ていうか、なんで出てこない?


トタタ


二階で何かが走る音がする。

少し不気味に思いながらも二階に下りて部屋を見まわす。

誰もいない。


トタタ


今度は上の方から音が聞こえる。

三階に戻り部屋を見まわすが、誰もいない。


トタタ


今度はまた二階から音がする。

これはひょっとして、遊ばれてるんじゃないか?

・・・

とりあえずもう一度二階に下りてみる。


トタタ


すると今度は一階から音が聞こえる。

このままかくれんぼを続ければこの空間から出られるのだろうか?

一階に下りてみる。


チーン


今度は和室の仏壇から音がする。

近づいてみる。


トタトタ


後ろの方で階段を上がる音がする。

くそっ。

急いで階段を駆け上がる。


ジャー


今度はトイレが流れた。

完全に遊ばれてるなと思いながらも、よく考えてみる。

今いる位置は二階の階段のすぐ側だ。

俺がここにいれば一階にも三階にも行けない。

だからここでじっとしていればそのうち姿を現わすはずだ。

さぁどこから出てくる・・・


・・・


ペタッ


小さな足音が近づいてくる。


ペタッ


もうすぐ俺の目の前を横切る。


ペタッ


今だ!

「捕まえた!」

俺は姿の見えないそいつをしっかり両手で捕まえた。


と、同時に俺は目を覚ました。

いつの間にかベットで寝ていたらしい。

今のは夢だったのか。

妄想空間だったのか。

ただ、これまでずっと見えなかった誰かが見えたような気がした。

二階からトタトタという音がする。

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つながる妄想異次元 @asayasusyami

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