scene 5
その人のフィードには、行かないことにしていた。
コントロールができなくなることがわかっていたから。
だけど、待っても待っても反応がない時間が、私を狂わせていく。
迷い戸惑い迷い、リリクテノールの響きは残酷な時の中で薄れていく。
そんな時間をを重ねたある日、無意識のうちにコメントのプロフを押していた。
自分をコントロールできなくなったときを、恋に落ちたというのかもしれない。
いくつかの写真、その人の住む街の中に、あの夜に教えてもらった店の名前を見つけた。
写真の下にはいくつかのコメント。
その中に知り合いがいないことを確認する。
彼はどう思うだろうか、私からの初めてのコメントを。
あたりさわりのない言葉を探す。
「一度、一緒に行ってみたいです」
送信を押す前に、「一緒に」を消した。
微かに震えていたとしても、もう止めることはできなかった。
送信ボタンを押したあとに後悔する。
あんなmessageのやりとりのあとだから、重たく感じないだろうか。
不安が広がる。
コメントを消したくなる。
でもそれも不自然。
何もできない。
無力な自分を感じて悲しくなる。
コントロールをしなくては、自分を。
ソファーの上にスマホを残して、私は久しぶりに意味もなく外出をした。
数時間、
おそらく数時間は経っているはず。
開いたSNSの画面。
私のフィードに変化はない。
確認をするだけー自分の心に言い訳をしながら、彼のフィードに飛んだ。
私のコメントに返信がきている。
彼からだ。
『いつでも案内しますよ。あなたの好きな場所を、あなたの好きな時間に』
そしてその送信の4分後に
『待っています』
私の好きな時間に、あなたの時間をもらえるのですか?
4分の間、あの人は何を考えていたのだろう?
決心ならば、うれしいのに。
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