scene 4



ほとんど使わないmessageに、何かが届いている。


あの人から!


開いた画面から特別な明るさを感じる。何の変哲も無いゴシックの文字で綴られた名前に、少女のようなときめきが。


開いてみると、リリックテノールが甦る。

無機質なはずの文字がなんて温かいのだろう。


「月がきれいです」


送信されたのは、午後2時30分。

明るすぎる空に月は見えない。

出会ったのは、満月の夜。

いたずら好きの月の女神、ディアナの媚薬はその人にもそそがれていた!


満ちていく悦びにふるえながら、返す言葉に不安になる。

伝わるだろうか。

全身を包むときめきと、満たされていく何かが。


伝えなければ、月がその姿を現す前に。

何度も読み返して、何度も迷いながら送信ボタンを押した。


『真昼の月は愛しすぎます。』



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る