第9話 腹が減っては訓練できぬ
程なくして三人が食堂に入ると、既に多くの騎士達が食事を取っていた。
この場所は多少のマナーや姿勢さえ気をつければ、わりかし自由にしていいという事になっている。
友人と喋りながら食べる者やお気に入りの組み合わせで食べる者、苦手な食べ物を隣に座る友人に食べて貰う者と様々だ。
中は大分広く作られており、建物内には大量の長机や椅子が置かれ、大きめの窓からは朝日が差し込み食堂全体を明るく照らしている。
食事は入ってすぐのカウンターで受け取り、空いてる場所に座って食べるという形になっていた。
そして、ここの食堂の最大の魅力は。
「おいしいー、ここの目玉焼きはいつ食べても頬がとろけそうだよ~」
王都でも行列が出来る程の店と張り合えるくらいに食事が美味しいのだ。
素朴な野菜から上質な肉までなにもかもがよく作られており、この駐屯地に配属された者の大半は以降食事がなによりも楽しみになるので有名だとか。
しかも、ただ美味いだけではない。日々の厳しい訓練を考慮し、カロリーは高めに設定されている他、野菜も豊富に盛られており栄養面にもしっかり配慮されていた。
「ティナさんもクロエさんも食べるの早いですね、ちゃんと噛んでますか?」
「もっ、もちろんよ、作ってくれた人に感謝して、しっかり噛んで味わってるわ」
っと、口ではそう言いながらティナの皿のおかずはもう殆ど形を残していなかった。
「そういうフィリアはまだ随分と残ってるみたいだけど、もしかしてお腹いっぱい!? なら私が食べてあげようか?」
クロエが自分の分を食べ終わり、フィリアの皿にまで手を伸ばそうとすると、フィリアは慌ててベーコンの乗った皿を自分の手前に引いてクロエから守った。
「......ダメ?」
「当たり前じゃないですか、これは私の最後のお楽しみなんですから。......でも、半分くらいないなら分けてもいいですよ」
そう言ってフィリアはナイフでベーコンを半分に切ると、クロエの完食された何ものっていないお皿にひょいと移した。
「ありがとフィリア! 今日の靴磨き一緒に手伝うよ」
そう言うや否や、クロエは貰ったベーコンにかぶりついていた。
「クロエは相変わらずね、そんなにいっぱい食べたら後で後悔するわよ」
「平気平気! 午前の訓練があるんだし、いっぱい食べなきゃお昼まで持たないよ」
それだけ言うと、クロエは残りのベーコンを口に入れた。
フィリアも、もう一つの楽しみに取っておいた目玉焼きをハムハムと頬張り始めた。
既に朝食を食べ終わったティナは、自分の服と同じ白色のマグカップに入ったミルクを飲みながら窓の外を眺めた。
街の上に広がる空はとても真っ青で、遠くの方には白い雲がうっすらと見える。
こんな日はのんびりとひなたぼっこに勤しみたいと思ったティナだが、毎日を暇で持て余していた今までとは違い、これから訓練が始まる為別の日にする事にした。
時刻は0700(マルナナマルマル)時。課業開始のラッパと同時に駐屯地の一日が始まる。
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