夢11

 燃えている。

 家が燃えている。

 圧倒的な現実が一歩退き、フィルターのかかった映像のように見える。

 けれど、リアルだと感じるのは、私が二度も、火事を近くで味わったからだろう。

 私の両目から涙が流れている。

 すべてを流し去ってしまうように、ゆっくりと、ゆっくりと。

 涙に揺れながら、燃え盛る家の二階に人が居る。

 本を読んでいる私と、立って泣いている晴美と。

「おい、火事だぞ」

「消防車呼べ」

 私が作り出した私の幻だろうか。

 それとも罪に苦しみ、自殺しようとした晴美の姿だったのか。

 私は力弱く笑った。

 もう終わったんだと、私は考える。

 全部、消えてしまうんだ。

 雑踏の騒がしさなど、どうでもいい。

 眼前の光景も、どうでもいい。

「そんな近くにいると危ないよ」

 私には私を心配してくれる人がいるから。

 私は彼に身を任せて、白んでゆく意識そのままに、ゆっくりと倒れる。

 どこか遠くで家が燃えている。

 ああ、それなのに。

 燃えている。

 鳥が、


 飛んでいるよ。

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