夢8

 燃えている。

 家が燃えている。

 全てを巻き込んで、私を狂わすように燃え上がっている。

 浮き上がるのは冷たい憎しみ。

 この光景を忘れてはいけない。

 現実でありながら、私から現実を奪ってしまった景色。

 私を暖めるふりをして、私を震え上がらせる。

 どこまでも鋭い、鳥の文様の入った包丁のように。

 左目からゆっくりと涙が流れる。

 その涙に揺れるように、二階に人影が見える。

 松田晴美だ。

 彼女は笑っている。

「おい、火事だぞ」

「消防車呼べ」

 何も知らない大人たちが、必死に騒ぎ立てる。

 裁かれなかった罪。

 裁かなければならない罪。

 私も笑った。

「そんな近くにいると危ないよ」

 誰かが私の肩を掴む。

 振り返ると、懐かしい顔がそこにあり、真剣な表情をしている。

 けれど、懐かしいだけで誰だか分からない。

 誰だろうと思う私の意識を、鳥が舞い奪う。

 どこか遠くで家が燃えている。

 燃えている。

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