夢6
夢
燃えている。
家が燃えている。
火事が、目の前で起きている。
だが、私には少しも現実の影を落とさない。
まるで夢や幻のように、一切の現実感を失ってしまっている。
そうあって欲しい。
それなのに、火の熱さだけはやけに感じられる。それだけ、私の心は冷えてしまっているのだろう。
その熱が私の心に達し溶かしてゆく。
私はその光景を、瞬きもせず見つめている。
左目から涙が、ゆっくりと流れる。
すべてを流しさってくれるなら、そうすればもう泣く必要もないのに。
「おい、火事だぞ」
「消防車呼べ」
人が集まり始める。
弱いものにしか力を示せない大人たちに、一体何ができるというのか。
私は力弱く笑った。
嬉しかったのか、悲しかったのか、楽しかったのか、辛かったのか。
「そんな近くにいると危ないよ」
優しい手が私の肩にかかる。
あなたは誰なの?
そう問う私をあざ笑うように、鳥が舞う。
どこか遠くで家が燃えている。
燃えている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます