夢6

 燃えている。

 家が燃えている。

 火事が、目の前で起きている。

 だが、私には少しも現実の影を落とさない。

 まるで夢や幻のように、一切の現実感を失ってしまっている。

 そうあって欲しい。

 それなのに、火の熱さだけはやけに感じられる。それだけ、私の心は冷えてしまっているのだろう。

 その熱が私の心に達し溶かしてゆく。

 私はその光景を、瞬きもせず見つめている。

 左目から涙が、ゆっくりと流れる。

 すべてを流しさってくれるなら、そうすればもう泣く必要もないのに。

「おい、火事だぞ」

「消防車呼べ」

 人が集まり始める。

 弱いものにしか力を示せない大人たちに、一体何ができるというのか。

 私は力弱く笑った。

 嬉しかったのか、悲しかったのか、楽しかったのか、辛かったのか。

「そんな近くにいると危ないよ」

 優しい手が私の肩にかかる。

 あなたは誰なの?

 そう問う私をあざ笑うように、鳥が舞う。

 どこか遠くで家が燃えている。

 燃えている。

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