早朝の戦い
とある孤児院で、目付きの悪い少年・鷹一が、いびきをかいて寝る奔放そうな少年・源翔を睨んでいた。
鷹一は掛け布団を引っぺがすと、源翔は寝転がってそれを取り戻そうとする。その背中を、鷹一は容赦なく蹴り飛ばした。
「何すんだよー、たかちー」
「貴様、今日は俺と洗濯当番だろ。何サボろうとしてる」
額に青筋を立てて怒る鷹一に、源翔は頭をポリポリ掻きながら首を傾げる。
「オイラ、今日具合が悪くてさー、優しい優しいたかちーならオイラの分までやってくれるよねー」
「この前もその前も同じ言い訳をしていたなお前。三度目はない」
「違うよー、五回くらいこれで乗り切ってるよー」
鷹一は、まだ寝転がったままの源翔を足蹴にしようと踏みつけた。だが、当人は転がってそれを避けてみせた。
「さっさと起きろ。起きられないなら一生土の中で眠っていろ」
「暴力はんたーい。わかったよー、起きるよー。次は」
そう言うと、源翔は窓を開けて、そこから飛び出してしまった。しまった、と思い鷹一が空を見上げると、源翔は風に流されて空を飛んでいた。
「でも今日はやる気出ないからー、たかちーよろしくー」
と、風に乗りながら、源翔はまた眠りについてしまった。
怒りが爆発した鷹一は、枕を持ちだして、今にも飛んでいきそうな源翔に投げつけた。
「いだっ! ああぁぁぁぁぁぁっ!」
するとバランスを崩したのか、源翔は急に体勢を崩し、そのまま木の上に落ちてしまった。
鷹一は、してやったりという顔をしていたが、背後にその光景を呆れながら見ている先生の存在には気づいていなかった。
二人は、洗濯物を干していた。
鷹一は一つ、源翔は二つのタンコブを作りながら、不機嫌そうにシワを伸ばしている。おまけに源翔は、身体に紐を括りつけられて逃げられないようになっている。
「なんで俺まで叱られなくちゃいけないんだ」
「連帯責任」
後ろで腕を組みながら、気怠そうに先生は言った。
「オイラ、今度から当番の日はもっと早めに逃げちゃおう」
「起きろ!」
こうして、また喧嘩を始める二人に、先生の呆れ混じりの拳骨が落とされた。
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